第108話つまみ食い

「う、うーん…」


ローズは夜中にふっと目が覚めた…


「どうした?」


隣を見るとバルトがピッタリとくっついて寝てくれていた。


「バルト、おはよう」


「おはようじゃねぇよ。まだ夜中だ」


「あっ…道理で暗いと…」


ローズは体を起こすと、体が軽い!


「すごい!痛みがほとんど無くなってる!」


自分の腕や足を見ると昨日の重さが嘘のように無くなっていた。


「クレアさんのマッサージ…凄すぎる」


しかしあの痛みをもう一度体験するのは御免だ…次からは気をつけよう。


ローズは夜中なので足音を立てないように歩くとカーテンをそっと開く。


すると部屋に月明かりが差し込んできた。


「沢山寝たから全然眠くないよ」


バルトを見ると眠そうに顔をゴシゴシと洗っている。


「バルトは寝てていいよ。私…少しお腹すいちゃったから…食べ物貰ってこようかな」


夜ご飯を食べていない事に気がついて今にもなりそうなお腹を押さえる。


「やめとけよ…誰かに見つかったらどうすんだ?」


「こんな時間に出歩く人なんていないでしょ?」


自分を棚に上げてないないと笑うと


「しょうがない…」


バルトが一緒に行くと立ち上がった。


「バルトは寝ててもいいよ?バルトの分も持ってきてあげるよ」


「俺は食べたいわけじゃない」


バルトはローズに構わずに肩に飛び乗る。


「ほら、さっさと行ってさっさと帰るぞ!」


「はーい!」


「シッ!声がでかい!」


「は、は…い」


声を落としてコソコソと部屋を出て行った…。


薄暗い廊下を音を立てずに歩いて行く、聞い慣れた厨房まで迷うことなく歩いていくと…


「何があるかな…」


ゴソゴソと食材をあさる。しかし…ピタッと手を止めると…


「今更だけどさぁ…これって泥棒になないよね?」


ローズが心配そうにバルトに確認する。


「知るか!後でちゃんと報告して謝っとけば大丈夫なんじゃないか…」


バルトが言うと…


「そうだね、でもあんまり汚さないようにしよう…パンでいいかな…」


ローズはパンを一つ手に取ると…


「誰だい?」


入り口の近くに揺らめく人影が見えた…


「ローズ!」


バルトが警戒する!


ローズが声がした方を見ると長いローブを羽織った男の人が手燭を手に持ち厨房に入ってきた。


ローズが手に持っているパンを見ると


「あれ?お仲間かな?君もつまみ食いしに?」


ニコッと優しく笑いかけられる。


「す、すみません!って仲間?もしかして…おじさんもお腹が空いて?」


「そうなんだよね、忙しくてなかなか食べる時間が無くて…」


物音を気にせずにガサガサと漁り出す!


その様子に慌てて


「よかったら私が簡単に何か作りましょうか?」


そっと声をかけると、驚いた顔をして見つめ返してきた。


「じゃあお願いしようかな」


おじさんはニコッと笑うと大人しく椅子に座った。


ローズは大人しくなったおじさんにホッとするとそっと棚を漁り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る