第93話木登り

「ロイ、何してるんだ?」


カイルが様子のおかしなロイに話しかける。


「いや…ローズもあんな格好をしているが…女性なんだと思って…」


「はっ?ローズはどんな格好をしていてもローズですよ」


カイルが当たり前のように答えると


「そうだな」


ロイはぶれないカイルに思わず笑ってしまった…。


「それで?バルト今度はどっち?」


ローズがロイに警戒しているバルトに聞くと


「この上だ」


そう言って大きな木の上を見つめる。


「えっ!この木に登るってこと!?」


「そうだ」


バルトは馬から飛び降りるとそのまま木に飛び移る。


ローズの声にロイとカイルが近づいきた…ローズ達から木に登ることを聞くと…


「この木か…」


「まぁ足場はしっかりとしてますから…大丈夫でしょ」


カイルは馬を降りると近くの木に手網縛り付ける。


ロイとローズの馬も繋げると…


「ローズは…まぁ木登りは得意そうだな」


キラキラと木を眺めているローズにロイが聞く。


「よくわかりますね!小さい頃からよくクリスと競走してました!こんな大きな木は登った事ありませんが…」


「ロイ…大丈夫か?」


カイルが心配そうに聞く


「問題ないだろ、じゃあ行くか」


ロイが幹ほど太い枝に手をかける。


「ロイ様達も登るんですか?大丈夫…ですか?」


ローズも不安そうにしていると


「木登りはした事ないが大丈夫だ。上に上がって行くだけだろ?」


「ロイ様…木登りした事ないんですか!…さすが王子様…」


ローズがボソッとつぶやくと


「言っとくがな!令嬢も普通は木登りしないからな!」


「えー?そうですかね?なら何で遊ぶのかしら…」


ローズは首を傾げるとロイに続いて木の枝に手を伸ばした。


バルトが先に足場を確認しながら登って行くとロイ、ローズ、カイルと続く…


「おい!猫!まだつかないのか!」


ロイがひょいひょいと軽い足取りで進むバルトに声をかけた!


「猫!?俺はバルトだ!」


バルトがシャー!とロイに牙を剥き出す!


ロイは構わず…


「あとどのくらいなんだ?」


「ふん!まだ半分くらいしか来てないぞもうバテたのか?」


「バテては無いが…ちょっと休もうローズもいるしな」


「私なら大丈夫ですよー」


ローズが下から声をかける。


「ああ言ってるぞ」


バルトがジロっとロイを睨むと


「ローズは俺達に気を使ってああ言ってるんだよ!これだから猫は…女性の気持ちをわかってないな」


やれやれとロイが首を振ると


「はん!ローズに相手にもされてないくせに…」


バルトはそうは言いながらも休めそうな足場を探す。


「もう少し行くと休めそうな場所がある…そこまで頑張れ…」


バルトが素っ気なくロイに言うと…


「なんだ…お前結構良い奴なんだな」


ロイは笑ってバルトのあとを追った。

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