最終回 元JKアイドルさんと元暇人夫婦の最終回。
大学生活を終え、純白のウェディングドレスに身を包む菜子に一生の幸せを約束する口付けをしてから10年が経とうとしていた。
俺、桜咲航は今、桜咲カンパニーの重役として多忙な日々を過ごしている。
一成さんは俺がトップの器になるまで、この椅子は守ると言っていた。
早く俺が成長して、一成さんには悠々自適な生活をさせてあげないといけない。
「もうこんな時間か」
時計は夜の11時を回っていた。
俺は書類をまとめて、会社を出た。
家には妻、そして妻の両親と、4人の子供たちが待っている。
俺は、本当に幸せ者なのかもしれない。
家族がいるってことは、それだけ生きる意味があると言うことなのだから。
「ただいま」
「お帰りなさい。航さん」
家に帰ると、妻が出迎えてくれる。
まだ赤ん坊の娘を抱っこしながら。
「さっきまでなかなか泣き止まなくて、一緒に航さんが帰ってくるのを待ってたんでちゅよねー」
菜子は娘にそう言って、娘の笑顔をこちらに見せてくれた。
「いつも苦労かけて悪いな、菜子」
「航さんは、必死に働いてくれてるんだからそんなこと言っちゃだーめっ」
「でも、お前だって、自分の芸能事務所の方が忙しいだろ?」
「大丈夫だって。ほんと航さんは、心配性だなぁもう」
「でも」
「もう4人目なんだから、慣れてるからっ」
菜子の笑顔は何年経っても変わらない。
お腹に子を抱えていた時も、色々なストレスや苦しみの中にあっても笑顔を忘れなかった。
やっぱり、そんな菜子のことが俺は好きだ。
「菜子、愛してる」
俺は娘の頭を優しく撫でながら、菜子の唇に自分の唇を重ねた。
「わたしもっ。あ、でも流石に5人目は大変だから」
菜子は頬を赤らめながらも、そう言った。
「そう言う意味じゃない! 愛してるって、単純にそう伝えたかっただけだ!」
✴︎✴︎
「愛斗と優香がまた幼稚園で喧嘩したみたいで、今日は少し疲れました」
「愛斗にはもう少し桜咲家の男として落ち着いてもらいたいものだな」
長男の愛斗と次女の優香は双子で、幼稚園に通っているが、大がつくほどの問題児でいつも園には迷惑をかけてしまっている。
「凛は? 相変わらず大人しく本を読んでるか?」
「はい。あの子は長女としてとても立派な子ですから」
「そっか」
長女の凛は小学生だが、ほかの小学生とは段違いに頭が良くて、顔の良さは菜子譲り、物静かなところと頭の良さは俺の遺伝だと勝手に思っている。(親バカ)
「この子も凛みたいに育ってくれるといいですね」
今、菜子が抱えているのは3女の撫子。
この子の将来はどんな姿になっているのだろう。
子が生まれる度に思うのは、その子の幸せはどんな形になるのか、ということだ。
どうしてあげたら幸せか、いつも親として考えている。
これは親になってみて、やっとわかったことだ。もしかしたら、俺の父さんも母さんもきっとそんな気持ちだったのだ。
だから、子供の幸せを願って俺の誕生日に……。
父さんと母さんに成長した姿を見せたかった……。
いい歳してそんなことを考えてしまうくらい俺はまだ未熟なんだと思える。
「菜子、今幸せか?」
「どうしたの、突然」
「いや、なんとなく」
そして、その瞬間菜子の顔が俺に近づく。
「すっごく幸せだよ。こーくんっ」
(fin)
《終わりに》
1ヶ月の連載、ここまで読んでくださった読者の皆様に感謝です。
この作品のテーマは「娯楽」です。
菜子と航が行く場所には様々な娯楽が溢れていました。
自分にはこの1ヶ月が過酷なものにすら思えていましたが、読者の皆さんがくれた感想やポイントのおかげでなんとかやってこれました。本当に感謝しております。
わたしはまだ未熟で、新作もどんな内容にするか決められてないですが、もし次の作品も読んでくださるならこの作品のブクマはそのままでお願いします!
いやぁ疲れましたけど、楽しかったです。
星野星野
↑
と、書いてから三年。
この時のわたしは、書籍化するなんて思っても見なかったです。
2023年の5月25日に菜子と航の物語が本になります。
各店舗で予約が始まっておりますので、皆様、何卒よろしくお願いいたします!
書籍化はゴールではなくスタートです。
ここからまた、ラノベ作家・星野星野として頑張るので、応援よろしくお願いします。
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