第9話 JKアイドルさんは散歩に興味があるらしい。01

 

 あー、緊張したぁ。


 電話が終わると、わたしはベッドに身を投げ仰向けになる。

 ピンク一色の部屋で天井を見上げながら、閑原くんとの会話を振り返った。


「緊張したけど、閑原くんとお話しできて良かったな」


 わたしは、ゲーセンで閑原くんに貰ったぬいぐるみを抱きながら、虚空を見つめる。


 閑原くん、今頃わたしの私服姿をネットで調べてるのかな?

 後で見るって言ってたし……きっと、そうだよね。


 ネットに、わたしの名前を打ち込む閑原くんを想像してしまう。

 それと一緒に、昨年撮った水着の写真とか一緒に出たらどうしよう!

 わたしはベッドの上で恥ずかし悶えた。


 閑原くん、わたしの水着姿の写真見つけたらどう思うのかな。

 ま、まぁ? 閑原くんも男の子だし? そういうこと思われてもわたしは全然気にしないけどー?

 けど…… えっちな目で見られるのは、恥ずかしいな。


 ぬいぐるみに顔を埋めて、心を落ち着かせる。

 

「あー、早く来週にならないかなー」


 閑原くんと話しているとなんだか心が豊かになる。

 閑原くんは、わたしが話すことをしっかり聞いてくれるし、優しく返事もしてくれる。

 面倒くさがり屋のくせに、そういうところはしっかりしているのが……カッコいい。

 それに、隣に閑原くんがいると、なんだか安心する。

 最近、夢にも出てくるくらいだし。


「はぁ……閑原くんに会いたいなぁ」


 ずっと、閑原くんのことを想いながら、眠りについた。


 ✳︎✳︎


 翌日の土曜日、仕事の都合で高校を休むことが多いわたしは、本来ならば休日だけど、欠席が多い生徒のために開かれる補講に参加しなければならないので、高校に来ていた。


 補講にはわたしと同じように芸能活動などで事情がある生徒や、あまり学校に顔を出せない生徒たちが参加し、一人一人指定されたプリントを熟す。


 せっかくのオフ日、そして尚且つ休日ということで、1日中自由行動できたはずなのに補講のせいでゆっくりできず、わたしは若干苛立っていた。

 補講、早く終わらせて帰りたいなぁ。


 時折休憩を入れながらも、午前中はずっと出された特別課題をこなすことで精一杯だった。


「……結局、午前中は潰れちゃったなぁ」


 やっと課題を終わらせることができ、肩を落としながら校舎から出ると、わたしは自分の目を疑った。

 おかしい、普通ならいる訳ないのに。


 あれ……って。

 少し遠くを歩く見覚えのある背中。


 これって、補講頑張ったわたしへのご褒美なのかな?

 今日ばかりは補講に感謝したい。


「閑原くんっ」


 ✳︎✳︎

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