206bit 素敵な瞬間
ドタドタドタドタドタ、ガチャッ。
廊下を走る
「い、糸っちぃぃぃ」
瞳を
雛乃の表情は、不安を安心で上書きしたような何とも
そして、再び勢いよく走り出したかと思えば、糸の寝ているベッドにそのまま盛大にダイブする。
「ぐふっ!!」
「もぉぉーー!! 糸っちのおバカおバカおバカおバカ!」
雛乃は衝撃に
「私たちがどれだけ心配したと思っているの!」
「ご、ごめん……」
口調こそ怒っているものの、口もとの両端は上にあがりきっている。
次の瞬間、雛乃は糸をぎゅっと抱きしめていた。
やわらかくて、あたたかな感情が糸の身体を包み込む。
「よかった……本当によかったよ……」
「雛乃ちゃん……く、苦しい」
「あわわごめん! ついっ」
雛乃はすぐさま身体を離した。
「雛乃は
真衣がやれやれといった
真衣の隣では英美里もいつもよくみるニコニコの笑顔を
あれ、どうしてだろう……。
つい昨日まで、あんなに悲しかったのに。
今は、なんだか、とっても、不思議な気分。
でも、この気持ちは決して忘れてはいけないような気がする。
贅沢で、美しくて、輝いていて。
ああ、そうか。
きっと、この気持ちは。
「糸っち、のろけている」
「糸ちゃん、ふやけている」
「糸、うかれてる」
「えっ?! 私そんな顔してた?!?」
糸は瞳をグルグルにし、手のひらを振りながら動揺した。
その姿に、雛乃も英美里も真衣もそれぞれの笑みがこぼれる。
そして糸も、そのどうしようもなく素敵な瞬間に笑ってしまった。
この気持ちをどう表現するのが正しいのか。
あんまりよくわからないけれど。
とにかく。
とにかく、今。
私はとっても幸せだ。
「ねぇ三人とも。 ひとつだけ、私のワガママをきいてもらってもいい?」
糸は穏やかにそう尋ねた。
三人は互いに目を見合わせたあと、同時にこくんと頷く。
その反応をみて、糸はふんわりと
「あのね、私、もう一度だけハジメさんとシズクさんに会いたいの」
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