132bit プレジデント真衣にゃん
「ありがとう雛乃先生! なんとなくわかってきた!」
「はぁ、はぁ……、繰り返すこと十回目にしてやっとなんとなく……はぁ……」
恐るべし糸っち。
雛乃はようやく説明の無限ループから抜け出すことができた。
「ディープラーニングによってAIの画像認識精度は格段にあがった。 でも、それだけじゃない。 自然な会話だってその恩恵のひとつ。 Koiだって人間とほとんど
雛乃がスライドを動かす。
次に映し出されたのは画像、ではなく動画だった。
「今回、弊社で新たに発表致しますサービスは、小説から漫画、図鑑から絵本までありとあらゆる本を電子書籍として提供し、皆さまの暮らしをより豊かに、より快適にさせることをお約束致します。 そのサービス名は『本まぐろ』でございます」
流れた動画を観た糸は、目を
その動画が幻でないことを確かめるために。
聞き覚えのあるサービス名と見覚えのある会場。
しかし、どこかが違う。
巨大モニターの前を歩きながら大勢の記者を前に演説しているひとりの人物。
その人物はIkuraグループの社長、イクラちゃんのお父さん。
ではなかった。
「まま、真衣ちゃん?!」
動画では、真衣が社長になりきって記者会見を行っていた。
「実際、真衣ちゃんはこんなことやってないけどね。 これはディープフェイクといって、AIを用いた映像制作技術のひとつ。 この動画は真衣ちゃんの顔のパーツを特徴として抽出して、社長の顔に対応させることで表情をコピーしている。 声も真衣ちゃんにできる限り寄せているよ」
「はえぇ……」
雛乃がタネを明かしてもなお、糸はその精巧さを前に口をあんぐりとさせたままだった。
「ただこの技術、やろうと思えば素人でもできちゃうから悪用されることも多いんだよね。 今回の動画は説明用に作ったものだからすぐに削除するけど、取り扱いや使用目的には十分注意し、な、い、と……」
突然、雛乃の声がつっかえる。
雛乃の視線は一点に集中していた。
「こんな動画を私に無断で作って……。 コンプライアンスが守れていない従業員には、多少のパワーハラスメントを行使しても問題はない? 平社員ピヨ乃?」
「どうかお目こぼしをぉぉ!」
社長の逆鱗に触れた雛乃はペコペコと謝った。
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