100bit ベストアンサー


 「電子書籍が普及したら、紙の本が消えて無くなる。 イクラちゃんはこう言っていたよね。 でも、本当にそんなことってあるのかな」


 英美里は井倉の予想に疑問をていした。


 「そっか、そうだよね」


 糸はすっかり盲点となっていた部分に気づく。


 そもそも、電子書籍がいくら世間に広まったからといって、紙の本が消えるだなんてあり得るのだろうか。


 あの時はイクラちゃんの言うことをそのまま鵜呑みにしてしまったけれど、改めて考えてみると、少しオーバーだ。


 「イクラちゃんや私の友だちのように、たとえ少数派であっても紙の本を求める気持ちさえあれば、紙の本は消えないんじゃないかな……って偉そうに言ってるけど」


 英美里は急に恥ずかしくなり、モジモジとしてしまう。


 「つまり、単にお嬢さんが心配性ってだけで、サバ読みを中止させる理由なんてはなからなかった、と」


 「真衣ちゃんの言うとおり……だけど、やっぱ違うよね! なんかごめんね、議論に水を差しちゃって」


 「いや、英美里ちゃんは的を射ているよ」


 英美里の主張に加勢したのは雛乃だった。


 「思えばイクラちゃんの要求は、あまりに大げさで、わがままだよ。 イクラちゃんがちょっと我慢すればそれで済む話だったんだ」


 雛乃ちゃん、手厳しい……。


 けど、変に飾らず思いをぶつけている分、雛乃ちゃんは雛乃ちゃんなりに、イクラちゃんの悩みと真剣に向き合っているのだろう。


 糸は雛乃の胸中をそうみ取った。


 「どうやら私たちはIkuraグループの社長ではなく、そのお嬢さん、ひいては依頼主を口説かなければいけないみたいね」


 真衣の総括に糸は大きく頷いた。


 「もしイクラちゃんの説得に成功したら、Ikuraグループも晴れてサバ読みを発表することができるし、イクラちゃんの不安もきっと振り払える」


 糸は三人を見据えて断じた。


 「ベストアンサーだよ」

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