88bit 仲よし小よし?


 「私は目黒真衣。 よろしくね、お嬢さん」


 「うむ、覚えた。 ちっこい大場糸とは違って目黒真衣はしっかりしていそうだ」


 「イクラちゃんだってちっこいでしょうに!」


 井倉の執拗しつような挑発に我慢の限界を超えてしまった糸は、ムキになって言い返した。


 「わ、私はちっこくなんかない! これから伸びるんだ!!」


 「でも今はちっこいでしょ! それにさっきから堂々と座っている場所は本来私の席だからね!」


 糸は足音を大きく鳴らしながら井倉の元に近寄る。


 「椅子も私に座ってもらえて光栄だと思っているだろうさ。 どっかのチビっ子とは違ってね」


 「どっちがチビっ子かはっきりさせようじゃないの!」


 糸と井倉は互いにバチバチとした視線を送り、もはや一触即発の状態だった。


 「あれ、真衣ちゃんなんでそこに立っているの?」


 たった今MANIACに到着した雛乃が真衣に声をかけた。


 「あれを見て」


 雛乃は真衣が指差す方を見やる。


 「あの金髪の女の子って……もしかしてイクラちゃん?」


 「そう。 なぜかわからないけどここにいる」


 「へぇ……」


 真衣は返事をした雛乃の声の調子に違和感を覚えた。


 どうやら雛乃はたのしげに何かをたくらんでいるらしい。


 雛乃は火花をあげてにらみ続ける糸と井倉に向かってまっすぐ歩いていく。


 やがて、二人の傍で立ち止まった雛乃は、両手をそれぞれ糸と井倉の頭の上にポンと乗せた。


 「よしよし、糸っちとイクラちゃんは仲よしだねぇ」


 「仲よしなんかじゃ!」

 「ない!!」


 糸と井倉の息がピッタリと重なる。


 「うんうん、二人ともっちゃくて可愛い可愛い」


 雛乃は糸と井倉の頭をでながら言った。


 あれ……ひょっとして私、からかわれてる?


 糸と井倉は雛乃を挟んで互いを見返した。

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