71bit これぞまさしく青春!!
うゔぅ……帰りたい……。
英美里は歩くたびに足取りが重くなっていくのを感じた。
着実に学校へ近づいている。
日曜日は学校へ行く準備に追われ、落ちつく間もなく気づけば月曜日になっていた。
「あ! 英美里ちゃんいたいた! おーい!!」
いきなり自分の名前を呼ぶ大きな声が聞こえたため、英美里は慌てて声のする方へ顔を向ける。
英美里の視線の先には、制服姿の三人がいた。
なんとも新鮮な光景である。
「ごめん、ちょっと遅れちゃった」
「平気平気! さぁ行こう!!」
そう言うと、雛乃は大きな歩幅で進み始めた。
先ほどの大きな呼び声といい、一番ノリノリなのは発案者である雛乃だった。
雛乃を追うようにして、糸、英美里、真衣も続く。
「英美里ちゃんの制服姿初めて見る……けど、やっぱりパーカーは着ているんだね」
英美里の着ていたジップパーカーを糸が不思議そうに見ている。
「う、うん……つい
「周囲をざわつかせるためにとりあえずパーカーを装備とは。 やはり英美里は相手にとって不足なし」
「真衣ちゃんは何の分析をしているの……」
糸が流れるように真衣の対応をした。
「あ! 新しいカフェがもうオープンしている!!」
雛乃がヒラヒラと風に
「本当だ! たしかプロのパティシエが作る絶品のショートケーキをここで食べられるんだよね。 今度四人で行ってみようよ!」
カフェの情報を知っていた糸が目を輝かせて言った。
「絶品の……ショートケーキ……食べてみたい……」
英美里が想像を膨らませながら呟いた。
「うんうん、これだよ私がやりたかったことは! JKがカフェとかケーキの話題で盛り上がりながら登校する、これぞまさしく青春!!」
「そ、そうなの、かなぁ……?」
「なんだいその糸っちの微妙な反応は。 楽しいよね? 英美里ちゃん」
「え、わ、私?! う、うん……」
とっても、楽しい。
「なんだー、英美里ちゃんも普通の反応だな。 真衣ちゃんは……」
「カフェってなに?」
「だよねー。 カフェ、知らないもんねー」
「いやいや! 雛乃ちゃん! ちゃんとツッコんで!」
英美里は三人の様子を見ながらクスクスと笑ってしまった。
MANIACのメンバーに会うまであんなに重かった足取りが、今は嘘のように軽い。
どうしてだろう。
とりとめもない時間が、ずっと愛おしく感じられた。
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