50bit 全てを受け入れて


 「やっぱり人気の歌い手だけあって、かなりのコメント数が来ている。 しかも、そのどれもにすぐコメント返しをしている」


 真衣は指でスクロールしながらコメント欄を動かした。


 「でも、心なしか批判めいたコメントが多いような……」


 糸が上下に動いているコメントを読みながら呟く。


 「人気になったの、たしか最近だったよね。 人気になりたての頃は色んな人に注目され始める頃だから、どうしてもアンチコメントは多くなりがちなんだよ」


 雛乃はえみり*に同情するかのように言った。


 当のえみり*はそのようなコメントにも例外なくコメント返しをしていた。


 『認めてもらえるように頑張ります!』

 『ご指摘ありがとうございます! 治せるように頑張ります!』

 『もっと上手になれるよう努力します!』


 ただの悪口のようなコメントや、無理難題を押し付けるようなコメントにも反発することなく、えみり*は全てを受け入れているようだった。


 「えみり*が本当に英美里ちゃんなのかは置いといて、私はえみり*のこと、好きだな。 歌もとっても上手だし、性格もきっといい人なんだと思う」


 糸は訥々とつとつと言った。


 「まぁ、頑張り屋さんのようだし、あんまり無理しなきゃいいけど」


 そう言って雛乃はベンチから立ち上がった。


 「そうこうしているうちにもう真っ暗だよ。 早く家に帰らないと」


 「雛乃ちゃんの言う通りだね。 帰ろう」


 糸と真衣も続けて立ち上がる。


 今度MANIACで会ったとき、英美里ちゃんにそれとなく聞いてみようかな。


 公園の真ん中でポツンと光る外灯を見ながら、糸はそう思った。

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