48bit ただ何となく


 

 「そっか」


 糸は少し俯き気味に返事をした。


 『中学の頃から不登校気味で、高校もあまり通えていない』


 MANIACで初めて出会ったとき、英美里ちゃんがそう言っていたはずだったため、さほど驚きはしなかった。


 ただ何となく、なぜ学校に来なくなってしまったんだろう、と思ってしまう。


 心配ではあるけれど余計なお節介で英美里ちゃんに迷惑はかけたくない。


 糸は複雑な気持ちになった。


 「まさか、私以外にもダメ大学生理論で生活している者がいたとは」


 「いや、英美里ちゃんはそんな理由じゃないと思うよ!」


 真衣の天然かどうかわからないボケに雛乃がツッコむ。


 その様子に糸は少しだけ和らいだ。


 あまり深く考えない方がいいかもしれない、糸はとりあえずそう思うことにした。


 「そういえば英美里のことで思い出したんだけど、糸と雛乃に見てもらいたい動画があるんだよね」


 唐突に真衣が言った。


 「動画? いいけど、学校じゃスマホ出すの危険だから、帰り道の公園で見せてよ。 糸っちも時間ありそう?」


 「うん。 大丈夫だよ」


 外靴に履き替えた糸、雛乃、真衣の三人は、暮れなずむ帰り道を横並びで歩いた。

 

 

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