37bit ごちそうさまです


 露天風呂を上がり、屋内へと戻った糸は最後に入るお風呂を選んでいた。


 すると、遠くの方でフラフラとした足取りで歩く真衣の姿を見つけた。


 真衣の顔は火照ったように赤くなっており、長風呂をしていたのか、のぼせている様子だった。


 危ないなと糸が思った矢先、ふらついた拍子に真衣は後ろから倒れそうになった。


 あっ! 糸は反応するも距離的に助けることが難しい。


 真衣ちゃんが倒れてしまう! と思ったときだった。


 雛乃が咄嗟に真衣の手首を握り、身体を寄せながら引っ張る。


 真衣の身体は倒れる寸前で持ちあがり、雛乃に支えられる状態となった。


 「真衣ちゃん、大丈夫……?」


 「え……えぇ……ちょっと……でも大丈夫……」


 「全然大丈夫じゃないでしょ……ほら、脱衣所に戻るよ」


 「う、うぅ……」


 結局真衣は雛乃の肩を借りながら脱衣所へと戻っていった。


 「大丈夫だといいけど……」


 糸がそう呟いたときに、隣に誰かの気配を感じた。


 気配の感じる方へ顔を向けると、そこにはシズクが立っていた。


 なぜかシズクは目を瞑って合掌をしている。


 「ごちそうさまです」


 「シズクさん、悪趣味が出ちゃってます……」

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