第24話 覚悟を決めて……

「「ごちそうさまでした!」」


 ようやく食べ終わった……。ん?なんでようやくかって?それは……まぁ、いろいろあったんだよ。幸せだったからいいんだけどね?


「謙人くん、お片付けは私にやらせてください。やってもらってばかりじゃ、悪いんで」


「じゃあ、一緒にやろう!それならどっちも遠慮することないしさ!」


「そうですね!」


 俺たちは流しに並んで立って、一緒に食器を洗った。たまに風に乗ってふわりと香ってくる涼風のいい匂いに、俺は正直ちゃんとお皿洗えたか不安です……。


「はぁ~、思ったより食べちゃったな」


 俺はソファーの右側に腰掛けた。左側を空けた理由は言わなくてもわかるだろう?


「そうですね。謙人くんのカレー、美味しかったです!」


「ありがとな。作り甲斐があったよ、そう言ってもらえると。次は何を作ろうかなぁ~」


 ふと涼風の方を見ると、少しそわそわしていた。なんだか最近、涼風の動きを敏感に感じ取れるようになってきた。


 ……涼風のことが好き過ぎだって?事実だから、しょうがない……


「け、謙人くん、疲れてませんか?」


 正直、そんなに疲れてはいなかったが、涼風の話し方的に、ここは疲れていると言うのが正解だろう。


「そうだな、慣れないことしてちょっと疲れたかな?」


 どうやら正解だったらしい。涼風はぱあっと顔を輝かせて、俺の方に近寄ってきた。もともとそこまで大きくないソファーだったため、俺と涼風の距離は一気にゼロになった。


「ちょ、す、涼風⁉」


「それは、ご苦労様です!それで、その、私が頑張った謙人くんにご褒美を上げます!」


 そう言って涼風は自分の太ももをポンポンとたたいた。


「ちょっと恥ずかしいですけど……、どうぞ?」


 え?うそ?え?これってもしや、膝枕イベントってやつじゃないの⁉まじで?


 ただ、微妙な関係性にある俺が、こんなことをしてしまっていいのか?こういうことは付き合ってからにとっておいたほうが良いのでは?


「やっぱり、嫌ですよね……?ごめんなさい、忘れてください……」


 何やってんだ俺は!せっかく涼風がやってくれるっていうのに!


「涼風、是非お願いしたいんだけど、いいかな?」


 涼風は満面の笑みを浮かべた。


「はい!」




「どう、ですか?痛くないですか?」


 俺は今、ソファーで涼風に膝枕をしてもらっている。端的に言って、最っ高です……!


「めちゃくちゃいい……!」


「それは良かったです。……ちょっと恥ずかしいですけどね、えへへ……」


 可愛すぎる!上を向くと色々見えてしまってやばそうだったから、涼風には背を向ける感じで寝てるけど、これはやばい。涼風の声がいつもより近くに聞こえるし、いろいろまとめると可愛すぎる!


 ……俺、なんか変態だな。


「涼風、ありがとね。おかげで疲れが取れたよ」


「もう大丈夫なんですか?もっとやっていてもいいんですよ?」


「もう大丈夫だよ。それに、そんなに長いことやってたら、涼風が疲れちゃうよ。……だから、ほら?」


 俺も涼風と同じように、自分の太ももをたたいた。


「涼風に比べたらごつごつしてて、寝心地悪いかもしれないけどね……」


「私がやってもいいんですか……!」


「だめなわけないでしょ?涼風もやってくれたんだから、お返しにね?」


「じゃ、じゃあ、失礼します……」


 涼風はそーっと俺の太ももに頭を乗せた。ふわりと、シャンプーのいい香りが届いた。


「謙人くんの、膝枕……!幸せです!」


「そいつは良かった。……そうだ!」


 俺は寝ている涼風の頭を優しくなでた。


「ひゃうっ!い、いきなりはやめてくださいっ!」


「あ、ごめんごめん。嫌だったか」


 俺はびっくりして、涼風の頭から手を離した。


「あ……。あ、あの、もっと撫でてくれませんか?」


 思わず笑ってしまった。


「あはは、どっちなんだよ?やれって言ったりやるなって言ったり」


「だ、だからですね?いきなりするのがだめなのであって、ちゃんと言ってくれたらびっくりしませんから」


「分かりましたよ、お姫様」


 俺はまた涼風の頭に手を乗せて、ゆっくり撫でた。


「……謙人くんに撫でてもらうと、落ち着きます。すっごい幸せです……!」


「涼風は可愛いなぁ……。もう、ずっと撫でてられる」


 でも、そんなに悠長なことは言ってられなかった。


 気づけばもう三時半。康政と待ち合わせた時間は四時だったため、そろそろ行かないとまずいだろう。


「ごめんな涼風。そろそろ行かなきゃ」


「私こそ、長々とごめんなさい」


「また今度やってあげるからな?」


 俺は起き上がった涼風の頭を後ろから撫でた。


「ふゎぁ~~~!」


「涼風は撫でられるのが本当に好きなんだなぁ。なんか、猫みたい!」


「別に誰でもってわけじゃないんですよ?謙人くんに撫でられるから嬉しいんです!」


 これはもう、本当に確定だろう……。


「涼風は本当に可愛いなぁ~」


 俺は一通り、涼風を愛でてから、玄関にむかった。


「あ、そうだ、涼風。今日の夜、帰りにもう一回寄るから、ちょっとだけいいかな?大事な話があるんだ……」


「はい……、私からもあります……」


 おそらく、そういうことなんだろう。でも、やっぱり俺から言いたい!よし、先手必勝!予定とはちょっと違うけど、終わり良ければ総て良しだ!


「じゃあ、行ってくる!」


「はい、こんなこと言うのは変かもしれませんが、頑張ってください!」


 よし、今だ!


「ありがとう、涼風。……それと、大好き」


「へっ?」


「じゃ、じゃあまた後で!」


 やばい!言ってしまった!めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……。


 ちらっと後ろを見ると、顔を真っ赤にして呆然とこっちを眺めている涼風がいた。



 ……帰ってきたら、仕切り直してちゃんと言わないとな!よし、そのためにも、絶対に逃げるもんか!


 俺は勇んで、同窓会へと向かった。








~~~~~~~~~~~~~


こいつら、付き合ってもないのに、大分お互いにグイグイ行きますね……


これ、付き合ったらどうなるのか、私も不安です……


どうも、作者でした。

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