異変の始まり


「お兄様、お風呂が沸きましたので入ってきてください。その間、合宿中の服をまとめて洗濯しておきますから」

「ん、わかった。ありがとう一華」



スッポン鍋を食べ終え、デザートのプリンを食べている時にこう言われた。

……会話が完全に熟年の夫婦だったな、今の。

まぁそれはともかく、風呂だー!

晩飯食べたからか睡眠欲がぶり返してきて本当は今すぐ布団に沈みたいけど、さすがに風呂入らないとヤベェよな、鍋食べたし。

そんなこんなで風呂へGO!

入浴中に寝て浴槽の中で溺れないように気をつけないとな……。



「お兄様、今日はお疲れでしょうからゆっくりのんびり入って身体を休めてくださいね」

「んー、わかったー」



本当はさっとシャワーで済ませて風呂から出て寝たかったんだけどな……。

まぁ一華の気遣いもありがたいし、せっかくだから今日はゆっくりのんびり入るとしよう。




……うん、良いお湯。

これは寝れる。


……だから寝ちゃダメなんだって!!






………この時俺は強烈な眠気のせいで気づけなかった。

いつもの一華ならこんなにも長い間離れていたら背中を流しに風呂に乱入してくるはず……なのに今回はそれがなかったということに。


つまり一華はこの時点でいつもの状態じゃなかった。

普通の状態じゃなかった。


そんなことも露知らず、俺はのんびりと風呂に入っていたのだった。

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