第55話「【タイマー】は、立ち向かう」
ルビンに向かって歩き出した黒衣の女。
そいつに向かって「タイム」を発動して、時を止めてやった!
そして、間違いなくタイムは命中し、黒衣の女は動きを止めた。
「や、やったか……?」
ピタリと静止した女。
そいつの目がルビンを射抜くように見つめたままピクリともしない。
「お兄さん、アイツ止めれた?」
ルビンに抱きかかえられたままレイナが心配そうに問う。
「ああ、大丈夫だ───こうなったらこっちのもんだ。今のうちに、」
ぞくりっ……。
その時、ルビンの背筋がヒヤリと凍る。
(な……! なんだ?!)
思わず、バッと振り向き、黒衣の女にむかって武器を構えた。
無防備で無抵抗なはずの女に向かって───……。
「お兄──────……ひゃ!!」
ガシャ、ガシャ!!
何かに気付いたレイナがルビンの腕の中で飛び跳ねる!
そして、その時にはルビンにも見えていた。
突如、棺から飛び出してきたのものが多数。
「な、なんだあれは?!」
驚愕するルビンの眼前にフワフワと浮かぶ黒い球体。
そいつが1個、2個、4個、8個───!!
「や、やばそうだ!!」
「なんかわかんないけど……お兄さん、逃げよ!」
うん!
その通り───! 状況不明な時は隠れるか逃げる! それが鉄則……!!
敵が正体不明ならなおさらだ!!
───ジャキンッ!!
耳朶を打つ金属音。
そして、
「な、なに?!」
しかし、一歩行動が遅かったらしい、
黒い球体がこの広い空間にフワリフワリと舞い上がると、ゆるくルビンたちを包囲してしまった。
そして、更に金属音!!
ジャキ、ジャキジャキジャキジャキ!!
「な、なんだこいつら!!」
硬質な音を立てる黒い球体!
そして、そこから長い筒のようなものが伸びる。
細い筒、
太い筒、
尖った筒!!
「「「「「「言語解析完了───……」」」」」」
「あ、あの女の声?!」
「み、見て! お兄さん! アイツ、こっちが見えてるッ!!」
レイナの声に我に返ったルビン。
すると、確かにタイムで止めたはずの黒衣の女がこちらを見ているような気配が!
そんなバカな!?
「こ、こいつも【タイマー】なのか?!」
「「「貴官に告ぐ。即刻武装解除し、我が方に恭順せよ」」」
「「「貴官は、時間魔術を使用した。我が方に敵対意思ありと認める」」」
「「「「「「暫定、敵性分子と認定」」」」」」
ふわりふわり……。
「「「降伏せよ」」」
「「「降伏せよ」」」
な、なんだこれは──?!
全部、あの女の声がするだと───!
「お兄さん! 早く逃げよ!」
「そ、そうだな!!」
球体が何だか知らないけど、あの女の動きは止まっている。
「タイム」は確かに効いているのだ。ならば、躊躇する必要などない!
そし、なによりもルビンの体の中を巡るドラゴンの血が騒いでいるッッ!!
逃げろ、逃げろ、逃げろ───と!!
アイツから逃げろと──────!!!
「逃げるよ!!」
「うん!!」
ルビンはレイナを強く抱締めて遁走開始!
女の動きが止まっているからと言ってトドメを刺そうという考えなど毛頭なかった。
絶好の機会だというのに───あの女を倒せる機会だというのに……。
なぜか、それだけはしてはならないと!!
ダッ!!
ルビンはわき目もふらず逃走開始!
この部屋から遁走を図る。
一刻も早く──────。
「「「「「「警告を無視───威嚇射撃開始ッ」」」」」」
な、
なに?!
バババババババババババババババババババババババ!!!
「うわ!」
「きゃあ!!」
空中に浮かんだ球体から火箭が迸る!
それは、けたたましい音ともに床を削り、暴力の嵐をルビンの直下に叩き込む!
「ひ、ひぃ……!」
「はぅ…………も、漏らしたぁ」
何やら腕の中でホカホカと。
「レイナ、ばっちぃ……」
「ごめーん」
しばしほんわかする二人であったが、危機を脱したわけではない。
今のは敵が本気でなかったというだけだ。
威嚇射撃とワザワザ行ってからの攻撃───……ルビンたちを舐めているのか?!
「くっそ! 逃がす気はないってことか───レイナ!」
「う、うん! 分かってる……!」
ルビンはレイナを床に下ろすと、ナイフを構えて黒衣の女に向かい合う。
「そ、そっちがその気なら、こっちも本気をだしていくぞ!」
「ま、負けない!!」
キラリとレイナの目が小さく光る。
彼女の【能力】はいつでも発動可能だ!
「先に手を出したのは───」
「そっちの方なんだからね!!」
そして、二人のタイマーと黒衣の女との戦いが始まる……!
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