第91話 耳を澄ませば聞こえてくる格式高さ

俺のような者にでも

中が豪邸なことは入らなくてもはっきりと分かる。



耳をすませば聞こえてくる




「 ジャーー  コトンッ 」




静寂な世界に自然の深みを生み出す

これは日本庭園でよく見る水琴窟。




そして、




「 ホー ホケキョ  」




特訓の末に身につけた雄の求愛行動

そう、これはウグイスのさえずり。



あれ?

ウグイスってこの時期でもまだ鳴いているのか?



まぁ、それはいいとして

極めつけは



なんだ、この門の大きさ、

いや、でかさは!?

『八千草』と書かれた表札ですら

俺の頭より遥かにでかい・・・孝也くらいか?!



家に入る前から

改めて自分自身の身分が

平民であることを

実感させられた太郎だった。



八千草さんは、本当は

孝也が言っていたように

姫様なのかもしれない。


一応、俺が持っている服装の中で

一番のオシャレ、いや、気を遣ったつもりだが、

これは気を引き締めないと


気付かないうちに無礼でも働いたら


せっぷ・・・く

なんて、ありえないありえない。

この時代に切腹なんて・・・


ねぇ~・・・・



まさかね!?




太郎がすでに門構えの圧倒差に

踏み入れることをためらっていると、

突然

八千草家のでっかい門が開いた!!!




お、おお!!



門が開くと

そこには麦わら帽子を被り、丸眼鏡をかけている

いかにも農作業をしているっぽいおじさん、

否、よく見れば見た目は

推定六十~七十代のおじさんの割に

背筋が伸びていて優しそうな瞳の中に鋭さを感じる。

これはおじさんではなく、おじ様だ!!(※太郎の勝手な解釈)



太郎がおじ様の観察&憶測を終えると

そのおじ様から



「こんにちは」


と挨拶を受ける。

太郎も続けて


「あ、こんにちは」


と慌てて一礼し挨拶をする。




「門の前で何をしているのかね?」



「あ、それが、今日は八千草さん、

八千草咲苗さんとお姉さんの美悠さんに用がありまして・・・」


「ほう、美悠お嬢様と咲苗お嬢様に?」


「お、お嬢様??あ、そうですそうです。」


「違っていたら失礼するが、

君は佐藤太郎君かな?」


「あ、はい、そうです。

一年の佐藤太郎です。」


「そうですか、君が。

咲苗お嬢様から話は通っています。

どうぞ、こちらへお入りください。」


「あ、はい。

ありがとうございます。」



こうして太郎は八千草家の門をくぐったのだった。





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