第53話 体育祭の始まりを告げる・・・モテ伝説?

朝日がゆっくりと顔を出す



「海満高校体育祭」



大きく書かれた看板が

静かに

そのときを待っていた。



そして続々と

海満高校の教職員が出勤してくるたびに、

生徒が登校してくるたびに

一人ひとりと目が合っていく。



彼ら、彼女らの目は僕にこう語る。




「 今日 なんだ 」






「アナウンスをします。

9時30分から海満高校体育祭開会式が始まります。

生徒のみなさんはグラウンドにお集まりください。」





「 いよいよ 何だね 」



看板は体育祭を見守るように建ち続ける。





体育祭が始まる!!!





首に赤、青、黄色のスカーフをまとった

生徒たちがぞくぞくとグラウンドに集まっていた。


「レディーレディーレディース アーンド ジェントルマーーーーン♪♪

今日はいよいよ決戦、いや体育祭の日です!!

体育祭は読んで字のごとく体育のお祭りです。

楽しむところは全力で楽しんで、

勝負のところは真剣勝負して、

盛り上がっていきましょー!盛り上がる準備はできてますかーー???」



「おーーーー!!!!」



「優勝する準備はできてますかー???」



「おーーーー!!!!」



赤組の放送担当 高坂あかね による放送で

赤組、青組、黄組の全生徒の気持ちが一気に高まった。


「これが高校の体育祭か。

めちゃくちゃテンション上がってきたぞ!」

孝也の興奮ぶりに

駿もニヤニヤで頷いた。


太郎はというと、

暑さにバテ始めていた。


「放送の人のところ行きたい・・・」


「タロ氏、まさかあそこにいる赤組のお姉さん、

いや、高坂あかね殿がタイプなのか?」


「いや、別に」

太郎が孝也の推察を否定すると


「よくあの人の名前知ってるね」

と駿が反応した。


「もちろんだ。敵陣の人とはいえ、

美名城先輩に並ぶ美女と海満の中では有名な方だ。

知らぬお主たちこそ不思議だぞ。」


「お、おう、すまん」


「ちなみに高坂あかね殿は今は高校二年生で、

パリからの帰国子女として騒がれ、

入学式の日に、

高三から二人

高二から三人

そして同じ高一から五人

全体で十人の男たちが粉砕したという

異常なまでのモテ伝説を残している。」



「えーーー!!!ほんとの話か、それ?」

駿が珍しく孝也の話に驚くと

孝也は続けて

「ああ、どうやら本当らしい。

これは噂ではなくて、伝説として語られている。

くそ、高坂先輩も青組だったら・・・」


孝也の切実な想いを駿は感じ取った。


「だからタロ氏が高坂先輩のお近づきになりたい

と思う気持ちはよく分かる。」


「いや、別にそういう」


「だがな、お主には我が青組のリーダー

美名城先輩がいるだろー!!」


「いや、だから俺は」


「いいか、よく聞くのだタロ氏!!」


「いや、まずお前が聞こ」


「美名城先輩は海満高校の三大美女として認定されている。

だが、あの高坂あかね先輩はその三大美女ではない。」


「え?そうなの?」

太郎よりも先に駿がまたまた反応した。


「そうだ。高坂先輩は確かにモテるが、

そもそも美名城先輩も含めて三大美女に対して

『モテる』という言葉を使うこと自体が

おこがましいとされている。」


「そうだったんだ。高嶺の花ということか。

俺たちはそんな先輩と行動を共にしていたのか。」



「ああ。光栄なことだろ?

特にタロ氏はそれを知っておいた方がいい。

おい、タロ氏、聞いているのか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る