第51話 幽霊か?女神か?それとも科学者か?

「彼女、もしかして幽霊なんじゃないですか?」

菊池の突拍子のない幽霊発言に


「幽霊か・・・

幽霊だったのかもな」

と夏海も幽霊説を認めた。


「まぁ、周りの誰が言っても言うことを

聞かなかったお兄ちゃんが一度しか会っていない

幽霊(彼女)の話を聞いて

規則正しい生活に戻ることができたからね。」


美名城が幽霊説にのっかると八千草は


「幽霊じゃなくて女神さまですよ、きっと!」


真面目な表情で八千草が答えたことで

笑いが起きた。


幽霊か女神か、はたまた科学者か

名も知らぬ彼女との話をここで後輩たちにできたことに

夏海はすっきりしたような吹っ切れたような気持ちでいた。


夏帆たちに負けねーよーに

俺も俺自身の使命を果たすぞ!!


「まぁ、俺の場合は

幽霊かも女神かも分からない人生の先輩に背中を押されて

今はこうしてみんなに支えられながらお店を開くことができている。

だから君たちの挑戦は人生の先輩として応援するから何でも相談してくれよ。

それに夏帆の大事な後輩とあっちゃほっとけないからな。」


夏海が幽霊から、

いや女神から受けた恩を

次は自分が後輩たちに与えていくと宣言をした。


美名城は、

「ほんと、時々それっぽいこと言うんだから」


「おいおい、それっぽいって・・・

そういえばもうそろそろ体育祭だな!

俺も力貸したんだから

しっかり楽しんで優勝もぎとってこいよ。」


「うん」


すると孝也が

「え、力貸したとは?」

と尋ねて

美名城が答えた。


美名城の説明を聞いた

孝也、そして菊池、八千草、駿は

あの視聴覚ホールで見た感動を思い出した。


実際にダンスチームとして踊っていたあのシーンが

まさか夏海の協力があってのことだとは

企画係だった太郎を除いて誰も知らなかった。


「タロちゃんは知ってたんだ・・・」


八千草が太郎の方を見つめると

太郎は軽く頷き、


「助手だからね」


美名城は

「ちなみに私のお兄ちゃんに協力を求めた、

いや、このカヌーを使った演目はすべて

タロちゃんの発想なのよ」

と付け加えた。


太郎は

「いやいやいや、まさか、美名城先輩のお兄さんが

ヨットをやっていたことすら知らなかったわけですから。」


店長は

「そうだったな。

だが、俺が協力する気になったのは

夏帆のためでもなければ、

体育祭に未練があったとかでもなくて

タロちゃんの熱意を感じたからだぜ!!」


謙遜顔からニコッと笑顔になった太郎に


「いや~、

まさかタロちゃんが

ただの助手ではなかったとは・・・」


菊池が驚くと


「俺なんかは先輩に比べれば何の役にも立ってないよ。

そんなことよりも夏海さんが

ただのヨット乗りでないことは知っている?」



「え?

ただのヨット乗りじゃないって?」


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