第17話 普通じゃない神経&並大抵じゃない精神力
「佐藤、わざとでしょ?」
「え、何が?」
数分前も聞かれたようなことを
菊池さんの口から出てきたことに
つい驚いてしまい、またとぼけてしまった。
「私、今日佐藤よりも先に寝てたんだけど、気付かなかった?」
無論気付いていた。
それは直接的なものではなく
真千先生を始め、周囲からの間接的なものであるが。
普段の俺ならここは気付かなかったふりをして
とぼけ続けるわけだが、昼食もとらずに待っていたわけだ。
とぼけるのは失礼に値するかもしれない。
仕方ない
真千先生同様
菊池さんにも見抜かれているのだとしたら、
これ以上とぼけても無駄だ。どちらにしても正直に話すとしよう。
「気付いてたよ」
「なら、なぜ私ではなくて
佐藤が先に真千先生から罰を受けるの?」
「それは俺の方が先に真千先生に居眠りがバレたからじゃないかな!」
「そういうと思った。でもそれは違う。」
「え?」
「実はね、私うつぶせになってたけど寝てたわけじゃないの。」
何を言い出すかと思いきや、寝てない発言!!
まさかの寝てない発言を聞き
「え、じゃあ、起きてたの?」
と聞くと、
「うん、起きてた。
私に真千先生が寝てるのかって確かめたでしょ。」
「ああ、確かめた」
「あれ、気付いてたけど
起きてるの悟られないために反応しなかったのよ。」
おいおいおい、
あなたは一体何を言っているんだ。
寝ていない発言だけにとどまらず、
真千先生相手に寝たフリまでしたというのか。
あの女王ティーチャーに寝たふりをするなんて普通の神経じゃない。
俺にはすでに菊池さんの考えが読めずにいた。
「何のために?」
「いつもいつも佐藤が寝たってだけで廊下に
立たされるのが許せなかったの。
誰にだって寝てしまうことなんてあるのに、
佐藤だけ集中的に罰せられてる。
だから今日は私が
佐藤に代わって罰を受けようと思ったの。」
ただただ眠気に抗えず、
講習中にスヤスヤと居眠りをしては
罰を受けることを繰り返す俺なんか
周りからしてみれば、真千先生も言っていた通り
どうしようもない奴ぐらいにしか思われてないだろうと思っていた。
だが、まさか代わって罰を受けようとする人がいるなんて想像もつかなかった。
「え、俺に代わって、
菊池さんが罰を受けようと・・・なんでだよ?
講習中に一番前の席で寝る俺が悪いのに、
どうして菊池さんがそれを代わりに受ける必要があるんだ。
どうしてそこまでしてくれる?」
菊池は太郎の目をまっすぐに見つめて
「すごいなとも思ってたんだ。」
「すごい?」
「だっていつもあのハリセンに耐えて
丸椅子の上で立ってるんだよ。
並大抵の精神力じゃ無理だよ、そんなの。」
「そ・・そうなのかな・・・」
「うん。それに寝ていられるの数分だけでさ。
罰が割にあってないよ。
だから佐藤に少しでも寝させてあげたかったのと、
私もあの罰を受けてみようと思って。
これでも私サーフィンやってて丸椅子で立つの特訓になりそうだし。」
「さ・・さようですか・・・」
菊池さんはすごいお人好しなのか・・・
罰をサーフィンの特訓と捉える意識高い系なのか・・・
俺同様にただのおバカさんなのか・・・
混乱しているが、確かなことは
面白い子であることに違いないということだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます