3-5 線香花火を見つめて
バーベキューを終え、いよいよ花火をすることになった。
夜になり、少しだけ寒くなったので、僕らは、上着を持って海岸へ行く。
僕と優君は、一緒に選んだ花火をみんなに見せた。
「これにしましたー」
「おーいいじゃん。」
みんな喜んでくれる。叔父さんも追加でいくつか花火をくれた。
武藤君は、早速花火を手にもち、笑いながら、花火を振り回している。
「お前、危な!」
凛君が武藤君を叱る。
「勇、気をつけなさい。」
重岡君も注意する。
全然反省する気がなさそうな武藤君だ。
「これ、どうぞ。」
重岡君が、隣にいる優君に花火を渡す。
「あ、ありがとう。」
優君は、やっぱり照れていた。
僕は、優君の背中をそっと押す。
「もう、愁君ったら、、」
優君と重岡君は、二人で花火を楽しみだした。
「ほれよ。」
武藤君が、僕に花火を渡す。すぐに点火してきた。
「ちょっ、、はやっ、、」
花火はすぐに点き、その花火の色は、とても綺麗だった。
「きれーい。」
つい見とれてしまう。
「たくさん、あるからジャンジャンやろうぜ!」
武藤君は、花火を大量に持っていた。
「わーい。わーい。」
東条君が、二本の花火を持ちながら騒いでいる。
藤澤君も無理矢理、花火を持たされ点火されていた。
武藤君は、三本持って楽しんでいる。
僕も武藤君に持たされた花火を点火して楽しんだ。
凛君も自分の花火を点け、強引に響君に花火をたくさん持たせ、点火させていた。少し困惑ぎみの響君だったけど、みんな楽しんでいる。
僕は、みんなの花火を見ながら、この楽しい時間がずっと続けばいいのになぁと思う。
しばらくして、藤澤君がその場を離れた。
少し離れた場所に大きな丸太があり、そこに座り、みんなを眺めていた。
気になってしまい、僕は、その隣に座る。
「みんなのところに、行かないの?」
「あいつらには、これ以上付き合えないな。」
藤澤君は、少し笑った。
笑った顔をサッカーをしている時以外で初めて見た気がする。
「サッカーの時以外でも笑うんだね。」
僕は、思ったことをつい口にしてしまう。
「そうだな。」
みんなを見つめるその顔は、優しかった。
「山口は、いつも笑っているけどなー」
そう言うとまた少し笑った。
「そうかなぁ、、」
なんだか照れてしまう。
藤澤君は、花火を見ながらそっと呟いた。
「山口を見ていると、なんだか温かい気持ちになる」
「えっ?」
突然の言葉に僕は、反応できなかった。
「そうだ、これ一緒にやるか?」
ポケットから線香花火を取り出し、その線香花火をくれる。
「うん。」
点火する線香花火。
僕は、藤澤君の花火から火をもらい、自分の火を起こす。
その光は、とても綺麗で、美しくて、愛おしい光を放つ。
ふと隣の藤澤君を見つめた。
光に照らされた横顔は、どこまでもかっこよくて、高校一年生に好きになった時の顔と何一つ変わっていなかった。
「クション、、、」
僕は、夜風にあたり、少しだけ寒くなりくしゃみをした。
何も言わず、藤澤君が着ていた上着を僕にかけてくれる。
「ありがとう。」
「風邪、引くなよ。」
渡された上着は、温かくて、甘い匂いがほのかにした。
「おーーーーーい!!!そこで何やってんだよ!!!お前らも来いよ!」
武藤君が、少し怒りながら僕らを呼んでいる。
みんなが僕らに手を振っている。
「行こう!」
僕は、笑顔で誘う。
「仕方ないな、、」
二人で明るく照らす光の中へ戻って行った。
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