第五十九話 また話してくれない

私は見上げてソニックの顔を見ると、あきらかに不機嫌ふきげんそうだった。


それは、きっと私の態度たいどえらそうだとか思っているからだろう。


なによ、そんな顔しなくったっていいじゃん。


それでも彼は早く話せと言っている。


しょうがないという言葉が、表情ひょうじょうからこぼれ落ちているけれどね。


ホント顔に出るやつだな。


まあ、ソニックのそういうところはわかりやすくていい。


「おいビクニ。もししょうない作戦さくせんだったら、ここからあのスライムにげつけてやるからな」


大丈夫だいじょうぶ大丈夫。しょうもなくなんかないから」


ソニックは何やらこわいことを言っているけれど、私は自信満々じしんまんまんだった。


そんな私を見たせいか、彼は不安ふあんそうにしていると、ググまで心配しんぱいそうにき始めた。


ホント失礼しつれいしちゃうよ、こいつら……。


「で、なんなんだ? その作戦って?」


「ふふん。パンがなければお菓子かしを食べればいいじゃない作戦あらため――リムが魔法まほうを使えないならソニックが使えばいいじゃない作戦だよ!」


私が声をりあげて言ったけれど、ソニックの反応はんのうつめたかった。


それでも私は作戦のことを話し続けた。


今は夜だし、吸血鬼族きゅうけつきぞくであるソニックの魔力まりょくは上がっている。


その状態じょうたいで私のえば、よく彼が愚痴ぐちっぽく言っている本来ほんらいちからってやつを取りもどして、あんなスライムなんか魔法でくせる。


「どうよ。これならリムにたよらなくてもスライムをやっつけられるでしょう」


「それは……ダメだ」


だけど、ソニックは私の作戦を拒否きょひした。


なんでよ?


前にライト王国で暴走ぼうそうしたググを止めたときだって――。


森でたたかった木の精霊せいれいドリアードだって、ソニックの火の魔法でやっつけたんでしょ?


なら今回も同じように――。


おさななじみの晴巻·倫理はれまきりんりことリンリじゃないけれど、ワンパンでたおせるくらい楽勝らくしょうでしょ?


「なんでよ!? なんでダメなのソニック!?」


わめく私にソニックは、だまったまま何の説明せつめいもしてくれない。


またなの?


またちゃんと説明してくれないの?


何か言ってくれないとわからないよ……。


「いい加減かげんにしてよソニック! そんなただダメだって言われたって納得なっとくできるわけないじゃん!」


「ともかくそいつはダメだ。何かべつの作戦を……そうだ!」


ソニックは、私とググをかかえたままさともんへと向かった。


そして、私とググを地上ちじょうろすと、そこにあった火のいた照明しょうめい――松明たいまつにぎった。


「火ならこいつを使えばいい。名付なづけて魔法がダメなら松明をつかえばいいじゃない作戦だ」


あきれてたくせにパクんなッ!」


私はソニックの態度に全然ぜんぜん納得なっとくしていなかったし、むしろ苛立いらだっていたけれど。


それはそれ、これはこれ――。


今は里のみんなをまもるためにスライムをやっつけることがさきだ。


「ソニック! あとでお説教せっきょうだからね!」


「わかったわかった。説教でも説法せっぽうでもなんでも聞くから、松明こいつを使ってあのスライムをたおすぞ」

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