番外編 異世界の先輩
「え~ここはどこなの?」
「わ~わ~
私たちは森の中を進んでいて、気がつくと
ソニックが商人の
一番の
森の木になっていた
持っていた
「ねえ、どうするの!? ねえねえ、どうなっちゃうの!? 私、こんなところで
「うるさいっ! 今に広い道へ出るから
「うわ~ん! お
今まで
人間とは、
それは
ソニックはあまりにも泣き喚く私が
「うわ~ん、ソニックが私のこと
私はただ大声で
そんなとき――。
突然ソニックに向かって
後に下がったソニックが私にぶつかり、喚いていた私はその
「出て来い! 一体誰だ!?」
ソニックが叫ぶと、その槍を突いてきた人物は、ゆっくりとその姿を
「
そこには、
でも、たしかにこの人、騎士だけど……。
キレイな金髪で背はすごく高いけど、
さらに顔をよく見てみると、
女の私から見てもキレイな人だよ。
「いきなり
「ふふ、我が名はサビィ·コルダスト。吸血鬼族
「へっ?」
このサビィという美人の騎士さん。
名乗る名はないと言ったのに、自分で名乗っちゃったけど……。
これって
でも、もしかして
私がそんなことを考えている
そこは、風の音と遠くから聞こえる鳥の
「自分で名乗ってるじゃないか」
あぁ~ソニックが言っちゃったよ。
突っ込んじゃったよ。
私は
「はぁっ!? しまったぁぁぁ!? またやってしまったぁぁぁっ!?」
どうやら私の
それにしても、またって……。
この美人さんは、いつもこんな感じなのかな。
「ふふ……ふははははっ!
「いや、俺はただ
私は
「このグングニルを使った
そう言ったサビィは持っている槍を、まるで
よくアニメとかで
って、
このサビィって人、なんかとても
「くそ!? 下がってろ、ビクニ!」
「ソニック、気を付けて!」
私たちが
「この女!? もしかして
「今さら気がついたか吸血鬼よ。だがもう
それは人間の
よくは知らないけど、たぶん世界レベルのアスリートやオリンピック選手でもあり得ない跳躍だ。
だけど……。
サビィって女の人は森の木の
それから数分後――。
「……遅いね」
「だな……」
私たちは空を見上げながら待っていたけど、彼女が戻って来る気配はなかった。
私たちが女騎士を待っていると、そこに一人の男が現れる。
「あの~君たち。この
眼鏡以外はいかにも
「金髪でさ。顔は
そうか。
この冒険者っぽい男の人は、あのサビィって人の冒険者仲間かな。
「はい、知ってますよ。実はですね……」
私はこの場で
突然槍で突いてきて、名乗るつもりはなかったはずなの名乗っちゃって、その後に大笑いして空を飛んで行ってしまったと。
「す、すんませんでしたぁぁぁ!」
冒険者っぽい眼鏡の男の人は、私の話を聞いた
その様子は、なんか
この人……きっと
「うおぉぉぉ! ぐはっ!?」
すると冒険者っぽい男が土下座している横に、さっき飛んで行ったサビィって女の人が落ちてきた。
美人が天空から降りてくるってシチュエーションって、これほどまでに
「ふふふ、やるな。私の負け……だ……ぐはっ!」
そして、プルプルと
「……
「だな……」
静かに見守っていた私とソニックの前で、冒険者っぽい男はさらに頭を
その後、気がついたサビィって女の人の
「すまなかった。まさか二人がライト王国を
彼女は、呼ぶときはサビィでいいと、さっきとは打って変わって気さくに話をしてくれた。
それと食料が尽きかけていた私たちに、自分たちの食料を分けてくれることに。
せめてもの
「ありがとうございます。私は
あれだけのダメっぷりを見たせいか、いつもなら
「俺は
「せきりょうた……って? あなたまさか?」
「
「
冒険者っぽい男の人――関涼太さんは、どうやら私と同じ世界――日本から来た人みたいだった。
ただ関涼太さんは転生で、私は召喚だったけれども。
「呼び方はビクニでいいよね。俺のこともリョウタって呼び捨てでいいから。あと
それから私たちは二人だけで話がしたいと移動することに――。
サビィはちょっと“アレ”な人だったけど、普通に話をする分にはコミュニケーション能力が高ったので、ソニックを相手にしてもうまく話をしていた。
それと
別に私たちがいなくても大丈夫そうだ。
そして二人っきりになった私たちは、自分がどうやってこの世界へやって来たのかを、
……というか、自然と
「いや、だから
「うんうん。私もそう思ってた」
「なのに、何の能力も
「私も上下スエットだった。引きこもりの定番だよね」
「いや俺、引きこもりではないから。あとアニメとかも
何度も眼鏡の位置を直しながら言うリョウタ。
わざわざ聞いてもないことを言うのは
まあ、別にいいけど……。
リョウタは日本で大学生をやっていたみたいで、ある日に自宅に突っ込んできた車に
もしかして、その女神――。
私に
「でさ。異世界へ行って世界を救わないかっていうもんだから、引き受けちゃったらこのあり様。転生の特典が付くって言うから来たのに、未だになんのスキルもアイテムも与えてもらってない。さらに女神にハーレムイベントはいつだって急かしても
スエット姿で異世界に放り出されたリョウタは、まず冒険者ギルドへ向かって
だけど登録料が
「最初の一年間は何のイベントもないままずっとバイト生活だよ! 肉体労働する異世界ファンタジーってなんだよ! 俺はコツコツ努力するのが一番嫌いなんだ!」
どうやら私よりも先にこの世界に来ていたみたいだな……。
それから、どうやってサビィと仲間になったのかを
なんでもバイト帰りに、冒険者の集団に囲まれていたサビィを助けるため、彼女を抱えて逃げてから今に
「そりゃサビィみたいな可愛い女騎士が困っていたら、ようやく俺のターンとか思うじゃないっスか。でも、結局そのイベントでも俺にチートスキルは発動せず、命からがらなんとか逃げ出したんだ。ホント殺されるかと思ったよ……」
泣きながら言うリョウタ。
この人が言うに、サビィはそこそこ有名な騎士の家系の生まれで、それが落ちぶれて
美人というのもあり、よく色んな男から狙われていたみたいなんだけど、彼女の“アレ”な性格を知って、相手にするのをやめるんだとか。
リョウタが彼女を助けたときに襲ってきた相手は、サビィのことを初めて見た結構名の知れた冒険者パーティーだったみたいで、そのときに逃げたせいで、リョウタとサビィには
「あの女はマジで
でも、こうやって文句を言っているのに、ちゃんと面倒をみてる理由はなんだろう?
ホントは好きなのにってやつかな?
そうならこの人って意外と素直になれないタイプなのかも。
そこはちょっソニックに似てる。
「サビィを助けたせいで金なし、宿無しの
気がつくと、リョウタは持っていたビンの
たぶん、あのビンの中身はお酒か……。
まあ、飲まなきゃやってられないんだろうな。
「俺だってイキリョウタとか、イキリリョウ太郎とか言われてぇよ……。ホント……もう……」
「うんうん。私もいきなり
「……なにそれ?」
「もう嫌になっちゃうでしょ。だってこんな
「……なにそれ?」
「それに
「……なにそれ?」
「それでさ。そんな王宮ライフを過ごしていたんだけど。突然お城で
「……なにそれ?」
「だからね。異世界に連れて来られた者同士、大変だなって話……」
「お前は全然大変じゃないだろっ!」
リョウタは、私の言葉を
すると彼の体からは、大量の魔力が
それは、
もしかして、この人のスキルってお酒を飲むと発動するんじゃ……?
リョウタは、この世の
「女神から暗黒騎士にしてもらって!? 王宮で食っちゃ寝生活して!? 専属の美人メイドがついて!? それで吸血鬼の少年と一緒に
そして、身を震わせて叫び出すリョウタを見たサビィが、
その後ろをググを頭に乗せたソニックが、どうでもよさそうな顔をしてついて来ている。
「おい、リョウタ!? どうしたんだ!? 何かあったのなら私に話をしてくれ!?」
この二人のコンビって、案外バランスがいいのかも。
「
「なんでよ、急に……?」
「ああっ! 同じ異世界へ来た人間なのにこの
散々くだを巻いたリョウタだったけれども。
次の日の朝には、暴れていたことを忘れており(私の話はなんとなく覚えていたみたいだったけど)、ちゃんと食料を分けてもくれた。
私とソニック、ググは、ちゃんとお礼を言い、別れの
そんな彼の背中を、心配そうに
リョウタは文句ばかりだけど、こんな美人と二人旅ってかなり異世界ファンタジーっぽくない?
「優しいね、サビィは」
私がサビィにそう言うと、彼女はニコッと
その顔はどこかで見たことがあるような気がしたのだけれども、はっきりとは思い出せなかった。
「私はリョウタに救われているからな」
「救われてる? ああ、助けてもらったってやつね」
「それもあるが……私のことを竜騎士として理解してくれたのは、離れ離れになってしまった姉とリョウタだけだからな」
……そうか。
たぶん親とか友達とか色んな人から、お前に竜騎士は向いていないって言われ続けたんだろうな。
だけどサビィは、自分が望む道を突き進み続けてきたんだ。
それも騎士道だよね。
この人……キレイなだけじゃなくて内面もカッコいいかも。
……まあ、あのジャンプはちょっと残念な感じだけど。
「うう、悪いねビクニ。だらしないとこ見せちゃってさ」
サビィに背中を
「いやいや、それよりもまた二人に会えるかな?」
私がそう訊くとサビィがクスッと笑った。
「会えるさ。なにかお前たちには
「
「ソニック! そんな言い方っ!」
私がソニックの皮肉めいた言葉に怒鳴ると、リョウタもサビィも微笑んだ。
そして、私たちは二人と別れて、再び森を進んでいく。
「なんか妙な二人組っだったな」
「うん。だけど、良い人たちだったね」
「同じ穴のムジナってやつだな」
「なにそれ? 私もあの二人と同類だって言うの?」
「お前も負けないくらい残念だよ」
「残念いうなぁぁぁっ!」
私が叫びながら頭突きを喰わらせると、その振動でソニックの頭に乗っていたググが起きた。
ググは、いつものように嬉しそうに大きく鳴く。
もう元気になったみたいでよかった。
「おい、見ろよビクニ。広い道に出たぞ」
「やった! これで次の街まであと少しだね」
それから私たちはようやく森を抜けることができた。
関係ないだろうけど、あのリョウタとサビィのおかげかな?
また会えるかはわからないけど。
もう一度二人に会えたらいいな。
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