第232話 マリーゴールド
ユイトへ。
手紙とか初めてで、何書けばいいか分かんねぇけど。
王都に帰る途中でさ、イーサンさんにユイトがくれた石の意味を教えてもらった。
たぶんユイトは知らずに贈ったんだろうけどな。
それでもすっげぇ嬉しかった。ありがとう。
王都に着いてからは、前よりももっと色んなもんに興味が湧いた様な気がする。
屋台で売ってる食材とか、入った店の料理とか。
ユイトが興味ありそうだなとか、好きそうな味だなとか。
食器とかも色々あるんだな。見てたら結構面白い。
こないだも店員に色々訊いてたら、リーダーたちに笑われた。
お前が質問するなんて、今日は槍でも降るのかって。
力じゃリーダーに敵わねぇから、腕を軽く殴っといた。
全く痛そうじゃなかったけどな。
こっちのギルマスにも変わったなって言われたし。
顔付きが変わったらしい。自分じゃ分かんねぇけど。
あ、オリビアさんの店紹介してくれたバーナードさんにお礼は伝えた。
ユイトと恋人になったって報告したら、めちゃくちゃお祝いしてくれたんだ。
だけど、ハルトとユウマが弟になるのか、ってすっげぇ羨ましがってたぞ。
また食いに行くってさ。
そっちにいる時もそうだけど、王都に帰って来てからは頻繁にユイトの顔を思い出す。
花とかも気にならなかったのに、なんか気付いたら買っててさ。
それを見たステラが息出来なくなるくらい笑ってて。
腹は立ったけど、自分でも気持ち悪いなって正直思う。
“マリーゴールド”って言うんだけど、
暖かい色で、なんかユイトみたいだなと思ってたら買ってた。
ステラが押し花の作り方教えてくれたから一緒に入れとくな。
気に入ってくれるといいんだけど。
王都に来たら、案内するから。
また二人でデートしような。
アレクシス
( うわぁああああ~~~~~~………っっっ!!! )
ベッドの上で手紙を読み返し我慢出来ずにジタバタ暴れていると、ハルトとユウマに怒られた。
手紙を引き出しにしまい、一緒に入っていた押し花を眺める。
オランジュ色の綺麗なマリーゴールド。
これをアレクさんが作ったのかと思うと、自然と顔がにやけてしまう……。
「おにぃちゃん……」
「にぃに!」
「はい……」
ハルトには呆れられ、ねるじかんだから、ねんね! とユウマにお腹をポンポンとされる。
これじゃ、どっちがお兄ちゃんか分からないな……。
お店でも僕はずっとにやけていたらしく、オリビアさんは幸せそうで何よりよ、と笑っていた。
久し振りに食べに来てくれたフローラさんとソフィアさんも、ユイトくん幸せそうねぇ、とにこにこしているし。
あ、フローラさんの養鶏場。僕がこのお店でもつ煮を出す様になったから、廃棄するしかなかった内臓も買い取ってくれるようになったみたい。
たぶん微々たるものなんだけど、美味しいお料理にしてくれてありがとう、と感謝されてしまった。
今日は帰りにレシピをこっそり渡しておいた。とっても喜んでくれて僕も嬉しくなってしまう。
ソフィアさんの所はサンプソンがやる気を出したらしく、荷運びもすぐに終わってしまうそう。他の馬や牛たちも、サンプソンのやる気に釣られてかいつも以上に頑張ってくれていると。仕事が早く終わるとお客様たちから評判らしい。
ハワードさんは新商品を開発中らしく、出来たら持ってくるわね、と笑顔を浮かべるソフィアさん。
そう言えば、以前のモッツァレラチーズもソフィアさんがこのお店に頼もうと言い出したみたいだし……。また新しいメニューを考えないといけないかも。
でも、新しい食材楽しみだもんな~。
お店は相変わらず忙しかったんだけど、今日は何故かいつもより上手くお店を回せた気がする。
オリビアさんは愛の力ね、と笑っていたけど。
えへへ、アレクさんの手紙、僕には効果てきめんの様だ。
僕の手紙も、アレクさんに届いたかなぁ?
ハァ……、僕も何か一緒に入れればよかった……。
今度の手紙には、お礼と一緒に何か入れたいな……。
ふふ! 押し花なんて、どんな顔して作ったんだろう?
王都に行ったら二人でデート……、ん~、出来るかなぁ……?
「にぃに~、まだおきてりゅの~?」
「ごめん~! もう寝るから~!」
ユウマに怒られ、おやすみ! と慌てて布団を被る。
だけど布団の中でもにやけてしまって、結局寝るのが遅くなってしまった。
ハァ……。せめて夢の中で、アレクさんに逢えます様に……。
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