第70話 帰ってきた討伐チーム


「こんにちは~! もう入っても大丈夫ですか~?」


 開店直後、お店の扉を元気に開けて入ってきたのはモリーさん。確かミランダさんのお友達だ。


「いらっしゃいませ! 大丈夫です。何名様ですか?」

「えっと~、今は四人なんですけど、あとからいち、にぃ……、五人来ます!」

「かしこまりました。こちらのお席へどうぞ」


 たぶんこの人たちが、ブレンダさんが言ってた冒険者パーティかな? て事は、ダリウスさんとかもあとから来るのかも。

 今入ってきたのは女性二名様と、ローブを被った……女性、かな? あと背の高いすっごくキレイな男の人。


「お冷をどうぞ。今日はダリウスさんたちもいらっしゃるんですか?」

「うん! あとから来るよ~! 私たち今日はすっごく食べると思うけど……、いいかなぁ~?」


 そう言って眉尻を下げ、窺うようにお冷をくぴくぴと飲んでいる。お客様なんだから気にしなくてもいいのに。


「大丈夫ですよ。気にせず好きなものを頼んでくださいね」

「よかったぁ~! あ、この二人は普通だから大丈夫! ねっ!」

「あぁ、モリーたちの食事を見てると、こっちも腹いっぱいになるからな」

「………(コクコク)」

「ハハ! うちらは皆食うからね。よく出禁にされるよ」


 そう豪快に笑う女性は以前も来てくれた……ルーナさん、だった気がする。見上げるほど背が高くて羨ましい。誰かに似ている気がするんだけど……。誰だったっけ……?


「皆様、ご注文はお連れ様と一緒ですか? 先に召し上がりますか?」

「もうすぐ来ると思うけど、先に食べちゃう! 私たまごサンド二つとコロッケ!」

「ワタシはカルボナーラとビフカツのセットにするよ。気に入ってるんだ」

「私も~! すっごく美味しい!」

「ありがとうございます! そう言っていただけると嬉しいです」


 僕がお礼を言うと、二人は目を細めて笑ってくれた。あとはこの人たちの注文だな。


「私はこのミートパスタ? のセットにしよう。キースはどうする? 決まったか?」

「………(コクコク)」

「わかった。あとオムレツのチーズ入りを一つ」

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


 キッチンに向かうと、注文を聞いていたオリビアさんがすでにパスタを茹で、たまごサンドを盛り付けている。さすがです。今日と明日は、いかに要領よく作れるかにかかってる気がするからね。僕も早速オムレツを作り始める。

 すると、扉の鐘がチリンと鳴った。


「あ、ダリウスさん! いらっしゃいませ!」


 ダリウスさんたち三人と、後ろに続くのは男性二人。挨拶するとダリウスさんはよっと片手をあげてくれた。


「いらっしゃい! テーブル席とカウンター席に分かれるけどいいかしら?」

「はい、大丈夫です」


 ダリウスさんがカウンター席に座り、あとの四人はテーブル席へ。

 テーブルに座ったコーディさんが周りをキョロキョロし、なんだか落ち着きがない様子。隣に座ったジュリアンさんはずっと苦笑いしている。


「オリビアさん、今日はトーマスさんいますか?」


 お冷を運んできたオリビアさんにそう聞いてきたのはダリウスさん。

 後ろに座っているコーディさんの耳が、こちらの会話に集中しているみたい。ピコピコ動いていて可愛らしい。

 向かいに座っている男性二人もコーディさんの様子に笑っている。


「えぇ、トーマスなら今日は裏庭にブランコを作ったから、それで遊んでるみたいよ?」

「ブランコ? トーマスさんが?」

「そうよ。今朝もハルトちゃんとユウマちゃんが喜んでたわ~!」

「噂には聞いてたけど、凄いな……」

「………(コクコク)」

「トーマスさんをそこまでさせるその子たちを見てみたい」

「おれ、めっちゃ興味湧いてきた!」


 今日、初めて来店してくれた人たちが口々に言い出した。僕は出来上がった料理を運びながら、聞き耳を立てているわけじゃないけどその会話を聞いている。

 ダリウスさんの大量の注文を聞きながらもずっとね。

 だって可愛い弟たちのことだから!


「あの子たち、すっごく可愛いよ~!」

「へぇー」

「だってあの子たちにお願いされて、皆食べに来るくらいなんだよ~? 可愛いに決まってるじゃ~ん! ね、オリビアさん!」

「あら、モリーちゃん分かってるじゃない!」


 オリビアさんもハルトとユウマが褒められて嬉しそう。僕もダリウスさんの大量の注文を作りながらにっこりしてしまう。カウンター席に座ってるダリウスさんは、僕の顔を見てそんなに料理楽しいのか? と勘違いしてまた追加で注文してきた。

 違うけど……、ありがとうございます……!


 オリビアさんも注文を聞いてきて、その数に一瞬だけ意識が遠のいたけど、皆さんお仕事で疲れてるからね。前回のは本当に腹ごなし的なカンジだったんだな~、と実感した。




「うっまぁ~!! なにこれ~!? めっちゃ肉うまぁ~い!!」

「はぁ~、沁みる……。このスープ美味しいですね……!」

「ん? お替りするのか? 大丈夫か?」

「………(コクコク)」

「え~? キース、お替りするの~? なら私のこれ、食べてみて! 美味しいから~!」

「へぇ、珍しいね! どうだい? それも美味しいけどこれも食べてみな?」

「おいおい、大丈夫か? え? なに? 美味しいって?」

「………(コクコク)」



 今日はまだ一組だけのハズなのに、すごく店内が賑やかです……。


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