193. 後出しじゃんけんだよ、こんなの


【ふっとさるぶじょしかい(4)】



○くらはたひなです

「大変なことになっちゃったねえ」


○くらはたひなです

「流石にここまでは予想しないというか」


○くらはたひなです

「ねー」


○くらはたひなです

「おーい」


○くらはたひなです

「どうして反応しないのー?」


○楠美琴音

「比奈が元気過ぎるのでは」


○くらはたひなです

「そうかなー? 普通だよー?」




「というか、皆さん一緒なのに何故チャットで」

「だって誰も喋らないんだもーん」

「…………そんな空気でもないでしょう」

「琴音ちゃんが場の空気を語るの?」

「……言わんとしていることは分かりますが」

「ならせめて返信しよーよ、ねっ、みんなも」




【ふっとさるぶじょしかい(4)】



○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「まー、こっちのほうが気楽ではある」


○Airi Nagase

「正直、どう反応すべきかわからない」


○くらはたひなです

「そんなにショッキングだった?」


○Airi Nagase

「なにが?」


○くらはたひなです

「陽翔くんが告白されちゃったこと」


○Airi Nagase

「そういうわけじゃないけど」


○くらはたひなです

「ビックリだよねー、バレなくて良かった」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「せめて花火はふつーに見たかった感」


○楠美琴音

「なら、そうすれば良かったのでは」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「いやぁ、とは言ってもねえ」


○くらはたひなです

「見て見て。二人ともまた繋いでるよ」


○Airi Nagase

「そうね」


○くらはたひなです

「本当に恋人同士みたい」


○楠美琴音

「確か、一旦は保留という形だったのでは?」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「肉体関係だけとかな」


○Airi Nagase

「それこそ無いでしょ」


○くらはたひなです

「どうかなー。あり得るかもよー」


○楠美琴音

「流石にどうでしょうか」


○くらはたひなです

「ちゃんと話聞いてる辺り、気になってるよね」


○Airi Nagase

「だから、違うって」


○くらはたひなです

「でもでもー。いま二人がなに話してるのか聞こえないけど、何だかんだで丸く収まったみたいだし、やっぱりいい関係なんじゃないかな?」




……………………




○くらはたひなです

「みんなどうしちゃったの? 本当に」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「べつにー」


○Airi Nagase

「疲れただけだし」


○楠美琴音

「浴衣であちこち動き回りましたからね」


○くらはたひなです

「みんな素直じゃないよね」


○くらはたひなです

「正直に言おうよ」


○くらはたひなです

「先越されちゃって焦ってるって」




……………………




○くらはたひなです

「この沈黙は肯定ということでいいのかな?」


○Airi Nagase

「違うし」


○くらはたひなです

「返信はやーい」


○Airi Nagase

「勘違いされても困るし」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「ひーにゃんはどうなのさ」


○くらはたひなです

「焦ってはないけど。いいなーって、思ってる」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「そっか」


○楠美琴音

「正直ですね、比奈」


○くらはたひなです

「だってわたしも、陽翔くんと花火観たかったし」


○Airi Nagase

「なら私たちと合わせなくても良かったのに」


○くらはたひなです

「これはこれで楽しかったけどね」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「まーぶっちゃけると、若干の焦りはある」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「昨日からなんとなーく思ってたし」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「こんな感じになんのかなって」


○楠美琴音

「逢瀬に誘うとは、そういうことのでしょう」


○くらはたひなです

「じゃあ、わたしたちはどうなの?」


○くらはたひなです

「陽翔くんのこと誘ったよね?」


○楠美琴音

「それはあくまで、部活仲間として」


○くらはたひなです

「それだけなら、こんな風にならないでしょ?」




……………………




○くらはたひなです

「あのね。こういうこと、言いたくないけど」


○くらはたひなです

「みんな、ちょっと意地悪っていうか、ズル過ぎだよ。そうやって自分の気持ち隠そうとして。陽翔くんのこと当て馬にして。別に、好きか嫌いかっていう極端な話をしてるつもりじゃないんだよ?」


○くらはたひなです

「もちろん、わたしにだって悪いところだったり、駄目なところはあるよ? 陽翔くん一人誘わないで、みんなで行こうって言い出したのもそうだし、こうやって尾行するのに賛成したのもそうだし」


○くらはたひなです

「でもだからって、陽翔くんと有希ちゃんがああいう風になってるからって、いじけたり無関心なフリするのは、ちょっと違うんじゃないかな」


○くらはたひなです

「誘うだけならもっと早く誘うことだって出来たんだよ。なのに、みんなはそうしなかった。有希ちゃんは勇気出して誘ったんだよ。それをわたしたちが、後からブーブー言うの? ちょっとズルくない?」


○くらはたひなです

「後出しじゃんけんだよ、こんなの。それもみんな、グーもチョキもパーも、なーんにも出してないのに。負けた気になっていじいじしてる。それってどうなの?」




……………………




○Airi Nagase

「ごめん」


○Airi Nagase

「比奈ちゃんの言う通りだと思う」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「うん、あたしも悪いわ」


○楠美琴音

「すみません。私も軽率でした」


○Airi Nagase

「みんながハルトのことどう思ってるか知らないけど。夏の間に、なにがあったか詳しく聞く気も無いけどさ。でも、ちょっと思い上がってるとこももあったと思う。わたしも」


○くらはたひなです

「ごめんね。空気悪くしちゃって。でも、ハッキリしなきゃ」


○くらはたひなです

「みんながハルトくんのことどう思ってるか、どういう風に接していきたいかは、みんなの、一人ひとりの自由だよ。有希ちゃんみたいに、恋愛的な感情があるかどうかも含めて、ね」


○くらはたひなです

「そうじゃなくても、みんなそれぞれで陽翔くんのこと、大事に思ってるんでしょ? だったら、陽翔くんに色々任せるんじゃなくて、自分から動かないと。それこそ今日みたいに、後から付けて二人のあれこれに文句を言うのは、一番駄目だと思います。以上でーす」


○楠美琴音

「はい。その通りだと思います」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「ひーにゃん、やっぱオトナだわ」


○くらはたひなです

「そんなことないよ」


○くらはたひなです

「それにまだわたしたち、グーもチョキもパーも出してないんだから。もしかしたら、勝てちゃうかもしれないでしょ? 勝ち負けじゃないかもしれないけど……だから、そういうことだよ」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「なるほど。ざぶとん一枚」


○くらはたひなです

「それに、陽翔くんだって悪いんだよ?」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「おっと一転攻勢だ」


○くらはたひなです

「しょうがない部分もあるかもだけど、みんなにいい顔してるんだから。優しすぎるのも問題だよね。有希ちゃんだって、好きになっちゃうよ」


○楠美琴音

「比奈は、どう思っているのですか」


○くらはたひなです

「わたしだって、陽翔くんのこと大好きだよ。でも、恋愛感情かは分かんない。だったら尚更、もっともっと近づいて確かめに行かないとでしょ?」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「それな」


○Airi Nagase

「ありがとね比奈ちゃん。ちょっと、つっかえが取れたかも」


○くらはたひなです

「どういたしましてー」


○くらはたひなです

「有希ちゃん車に乗ったけど、まだ尾行続ける?」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「ハルだけ追っかけたらただのストーカーじゃね」


○楠美琴音

「それより、こっち見てませんかあの人」


○みんなだいすきみずきさん@暑すぎワロタ

「ホントだ近づいてる」


○くらはたひなです

「どこからバレてたのかな」


○Airi Nagase

「まだそうと決まったわけじゃ」




「おい、いつまでスマホ弄っとんねん。観念しろ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る