第262話 魔界の街
「……えっと……普通に街ですね」
俺たちはそのまま発見した街の中に入っていった。
もちろん警戒心はあったが、入ってしまうと、俺たちは思わず拍子抜けしてしまった。
街は……確かに街だった。そして、街の住人はまぎれもなく魔物や魔族の者達だった。
彼らは、人間と同様に店の中に入っていったり、道路で立ち話なんかをしっている。
その光景はいつも魔族やモンスターを討伐してきた俺たちの目には、どうにも奇異に見えてしまうのであった。
ただ、彼らは俺たちを見ても少し不思議そうな顔をしてはいるが、特に攻撃してくるわけでもなく、警戒しているわけでもなかった。
「……ちょっと、サキ。アンタ、案内しなさいよ」
メルに言われてサキは少し泣きそうな顔をする。
「そ、そう言われましても……私もここ、初めてなんですけど……」
「あのねぇ……人間の私達が話しかけるより、サキュバスのアンタが話しかけたほうが安全でしょ」
「えぇ~……そうですかぁ? ……まぁ、でもそういうのなら……やりますけど」
安全かどうかはわからないが、ここはまずサキに話をしてもらったほうがいいだろう。
とにかく、サキにまずは休憩出来る場所があるかどうか聞いてもらうことにした。
「あ、あの!」
と、たまたま近くを通ったリザードマンっぽい人物にサキは話しかけた。
「ん? なんだい?」
リザードマンは気さくに返事をしてきた。
「えっと……こ、ここらへんで休憩出来る場所ってありませんか?」
「休憩? あ~……もしかして、旅の人?」
そう言ってリザードマンは特に違和感ないと言った感じで俺たちのことを見る。
「え、えぇ……そうです」
「それなら、ここから少し言った先に宿屋があるよ。君、サキュバスみたいだけど、スモンタの街は初めてなの?」
「スモンタ? それがここの街の名前ですか?」
「あぁ。魔界唯一の街スモンタ。住んでいるのは俺たちみたいなモンスターや魔族だけ。君たち人間だろう?」
俺たちは戸惑ったが、仕方なくそのまま首を縦に降る。
「へぇ……初めて見るなぁ。そんな危険そうじゃないんだね」
そう言うとリザードマンは俺たちに向かって手招きする。
「付いてきて。案内するよ」
そう言ってリザードマンは歩き始めてしまった。
「どうする? 彼に付いていく?」
ミラに尋ねられ俺は決断を迫られる。しかし、今は背中に背負ったリアを休憩させる必要があるし……。
「……行きましょう」
危険を感じないわけでもなかったが、俺たちはリザードマンの後をついていくことにしたのだった。
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