第236話 新たなる困難
「えっと……リア、もう大丈夫なんですか?」
それから数日経って、俺たちはギルドの集会所にいた。
レイリアとの激闘を制したリアは完全に快復したようだった。無論、その隣には元気そうなミラも立っている。
「あぁ! もう完全に調子を取り戻したぞ! 心配をかけたな!」
リアはいつも通りの俺の知っている元気な声でそう言う。
「あぁ、ウチも完全に元通りになったよ。いやぁ~、心配かけたね~」
「アンタねぇ……あんなことしておいて、言うことがそれだけなわけ?」
呆れ顔でそう言うメル。しかし、ミラはいつも通りのヘラヘラした様子で対応しているだけである。
といっても、俺は……その光景がなんだかひどく久しぶりに思えてきてしまった。
ラティアを救わないといけないという使命があるとはいえ、こうやってはみ出しものだらけのパーティで呑気に笑いあうという行為自体がかなり久しぶりに思えたのである。
「……えっと、それで、だな。皆に話して置かなければならないことがある」
と、いきなりリアがそう言った。俺たちはリアの方向に一様に顔を向ける。
「……私の眠っている時だったんだが……魔王への城の行き方がわかった」
「え? わかった、って……」
「あぁ……おそらく、レイリアの仕業なんだが……夢の中で間接的に教えられているような感覚だったんだ」
リアがそう言って視線を伏せる。俺達三人は顔を見合わせる。
「……それで? 魔王の城への行き方は?」
ミラがリアに単刀直入にそう訊ねる。リアは少し躊躇った表情をしていたが、やがて、話しをしようと真剣な表情になる。
「魔王の城の行き方は――」
「あ! よ、ようやく見つけましたわ!」
と、リアが話をしようとした矢先……俺たちの背後から素っ頓狂だが……聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……この声は、確か……」
と、思わず声のした方に顔を向けると……そこに立っていたのは――
「ホリア……と、メディ?」
そこに立っていたのは、かつて俺を追い出したパーティの仲間であったホリア、そして、そのパーティに参加してしまった元ギルド所属のヒーラーのメディだった。
俺が呆然としていると、いきなりホリアが鬼気迫る顔で俺の方に近づいてくる。
「お、お願いしますわ! もうアナタにしか頼めないんですの!」
「ちょ……ホリア! 一体どうしたんです!? メディも……」
俺がそう言うとメディは申し訳無さそうに視線を伏せるだけである。俺は今一度ホリアの方を見る。
「勇者様を……勇者様を助けてください!」
……ホリアが言った言葉は、どうやらまたしても俺たちのパーティに対して、とてつもない困難が始まることを予見させるものなのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます