第224話 どんな方法を使っても
「……め、メル……まだ、魔力は尽きないのか?」
それから数時間後、それこそ、空の向こうがオレンジ色になってきた頃に、リアはメルに訊ねる。
「心配しないで。まだまだ、後半日くらいは行けるわよ?」
「は、半日……」
それを聞いてリアは座り込んでしまう。
「ちょっと! リア! なんでやめちゃうの! 傷は完全に回復しているでしょ?」
メルが怒り気味にそう訊ねる。
「あ、あぁ……完全に回復しているのだが……精神的にかなり疲労しているのだ……」
「はぁ!? アンタ、それでも強くなりたいわけ!?」
「メル! ちょっと落ち着いて下さい!」
と、俺が仲裁に入る。メルは不満そうに俺のことを見る。
「何? アストももうやめるって言いたいの?」
「えぇ……その……俺も……疲れましたので……」
実際、腕輪の力をここまで長い時間引き出し続けるのはかなり疲れていた。それに……俺には「リジェネレイト」の魔法はかかっていないのである。
「あ……そ、そうね……じゃあ、そろそろ帰りましょうか。続きは明日にしましょ」
苦笑いしながらそう言ってその場を後にするメル。
「……メルって、結構スパルタなんですね」
俺は完全に疲労困憊しているリアにそう言う。
「あぁ……しかし、今日は、アストの攻撃をまともに捌けなかった……こんな調子で大丈夫なのだろうか……」
不安そうにそう云うリア。確かに俺の攻撃にリアはまともに反応できていなかった。
「……リア。一つ聞いていいですか? 今、本当に俺のことを敵として認識していますか?」
「え……な、何だ急に……私が! 真面目にやっていないというのか!?」
と、リアは俺に詰め寄りながら反論する。しかし、俺は首を横にふる。
「違います。リアが真面目にやっているというのはわかります。ですが……どうにも俺に対して遠慮があるような気がするんです」
「そ、それは……仲間であるお前に攻撃するのは……気が引けるのは当たり前だろう」
……まぁ、それは仕方ないだろう。リアは根本的に優しい性質なわけだし。だとすると、中々俺が相手で修業をするのは厳しいかもしれないが……
「あ」
と、俺はある方法を思いついた。この方法ならリアが本気で俺に攻撃することができるだろう、と。
「リア……明日は、俺も少し工夫をしてみていいですか?」
「え? 構わないが……すまないな、色々と……」
「いえいえ。俺はリアが強くなるためにはどんな方法でも使うつもりですよ」
俺は笑顔でそう言うと、リアは少し不安そう顔をする。その言葉の通り、俺はどんな方法でも使うつもりで、明日の修行に臨もうとしていたのだった。
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