第214話 冗談ですよね?

 その後、俺たちはミラの転移魔法によって、街に戻ってきた。


 戻ってきたと言っても、人数は一人少ない。ラティアを俺たちは……ルミス教団の街へ置いてきてしまったのだ。


 皆どことなく口数が少ないが……一番落ち込んでいるのはリアだ。


 先程から何も言わずに黙ったままだ。俺達もなんと話しかければよいのか……


「……とりあえず、次どうするんですかね……?」


 遠慮がちにそう言ったのはサキだった。俺たちは思わず顔を見合わせてしまう。


 どうする……それは決まっている。ラティアを開放するためには……ルミス、そして、マギナを探し出して倒す……それだけだ。


 しかし、一番の問題は……そもそも、マギナとルミスがどこに行ったのか、だ。奴らがどこにいるかわからなければ探しようがない。


「決まってるよ。倒すんだよ、マギナとルミスを」


 そうはっきり言ったのは、ミラだった。しかし、ミラは決していつものように冗談めかして言っているようには見えない。


「倒すって……どこにいるかわからないと倒しようがないような……」


 サキは遠慮がちにそう云うが、たしかにそのとおりである。


「わからない? ウチはわかっているよ、彼女たちがどこに行ったか」


「え? その……あの人達がいる場所って……」


 サキがそう尋ねるとミラはニヤリと微笑んで俺のことを見る。


「アスト君、皆にも言っていいよね。マギナが得意げな顔で、一体誰と共犯者だって言ったのか」


 ……もちろん俺も覚えている。そして、ミラが一体これからどうしようとしているかということも。


「……マギナは言っていました。自分達は……魔王の共犯者だ、と」


 俺がそう言うとさすがに皆黙ってしまった。しばらくの沈黙の後で、フッと小さく微笑んだのは……メルだった。


「……まぁ、そんなところだろうと思ったわ。なんとなくだけど」


 どうやら、メルはまるで動じてなどいないようである。というか、本当に最初からなんとなくそう思っていたようである。


「……魔王だろうがなんだろうが関係ない。私は……姉上を解放したい。それだけだ」


 リアは既に決意を決めているようである。俺も同じ意見だった。


「……え? ま、魔王って……え? もしかして……今、この世界に存在している魔王を倒すってことですか?」


 と、なぜか半笑いで訊ねてくるサキ。そう聞かれて俺たちは同時に深く頷く。


「……え……えぇ!? ほ、本気で言っているんですかぁ!?」


 そして……サキだけが、これ以上ないくらいに驚いているのであった。

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