第166話 暴走
「み……ミラ!?」
次の瞬間、俺達は全く別の場所に転移していた。もちろん、氷漬けの女冒険者たちも一緒に。
「ちょっと! アンタ、しっかりしなさいよ!」
メルの声が聞こえる。俺は慌ててそちらの方に走る。見ると、ミラはメルに抱きかかえられていた。
「ミラ! なんでこんな無茶を……!」
「……あ、あはは……だ、だって……こうするしか……ないでしょ?」
なんとか笑みを浮かべようとするが、既に魔力切れなのか、かなり衰弱しているようである。
「メル! ミラの手当を!」
「もうやってるわよ! 魔力を完全に使い切っちゃったからここまで弱っちゃってるの!」
半分怒りながらも、メルは治癒魔術を発動させている。
「アスト君……」
「ミラ! もう喋らないで下さい!」
「……あれ……どうにかしてよね……」
そう言ってミラは一点を指差す。その先にあったのは……俺達が今まで居たはずの城だった。
いや、正確には城だったものである。既に城のあらゆる部分からは巨大な触手が生え始めており、まるで城が生物のように見えるのだ。
『グォォォォォ!!!』
どこから聞こえてくるのかわからないが、不気味な巨大な声が聞こえてくる。いや、発生源はあの城である。城は既に……一つの巨大な怪物になっているようだった。
「アスト!」
と、こちらに向かってくる声が聞こえてきた。
「アッシュ!」
見ると、アッシュがホリアを背中に背負ってこちらに走ってくる。
「あれ……なんだよ……」
「わかりません……ホリアは?」
「アイツが触手の化け物になった瞬間、気絶しちまった。おそらく、氷漬けになっている奴らも気絶しているんじゃないか?」
確かにアッシュの言う通り、ホリアは気絶しているようである。となると、目下の問題は……
「あの……化け物か」
俺がそう言おうとする前に、ラティアが険しい顔つきでそう言った。
「ラティア……あれが何かわかりますか?」
「知らん。あんな醜悪な存在は見たことがない」
吐き捨てるようにそう云うラティア。俺は思わずサキとキリの方を見てしまう。
「い、いやぁ~……少なくともインキュバスではなかったことは確かですね……あはは……」
「……えぇ。ただ、もう一つ言えることがあります」
と、キリが沈鬱な表情でそう云う。
「言えること……なんですか? キリ」
「……あれは莫大な魔力を秘めています。いえ……秘めているというより、魔力そのもの……あの化け物自体が魔力でできている感じです」
「魔力でできている感じ、ですか?」
「あ~……確かにそうかもしれないです。私もそれは感じます」
キリとサキが同じような感想を云う。俺は今一度ラティアの方に視線を戻す。
「確かに……だが、純粋な魔力ではない。暴走した魔力だ。しかもそれはまるで……人為的に暴走させられているような……」
「暴走させられている? それって――」
「言葉の通り。あれは暴走しておるな」
と、聞き覚えのある声が聞こえてきて、俺は慌てて後ろを振り返る。見ると……リアがそこに立っていた。
ただ、残念なことにその笑顔はリアのような純粋なものではなく、邪悪な笑み……レイリアのものであった。
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