第158話 聳え立つ城

 それからラティアはカイに付いていく。俺達もその後を追った。


 カイが進んでいくのは深い森の奥……人気のない場所だった。拠点なんかがあるなんて信じられないような場所だ。


「本当にこんな場所に拠点なんてあるんですかね?」


 隣を歩いていたサキが小声でそう言う。といっても、今はその拠点とやらがあることを信じて進んでいかなくてはいけないだろう。


 と、いきなり、森から抜けて広い場所に出る。俺達は慌てて近くの物陰に身を隠す。


「な……なんだあれ……」


 アッシュが思わず驚きの声をあげる。それも無理はない。俺も驚いていたからだ。


 目の前に、いきなり大きな城が見えた。明らかに周囲の寂れた風景に似合わない城がそこにそびえ立っていたのである。


「あれが……拠点?」


 リアも同様に驚いている。しかし、実際にカイとラティアは城の方に進んでいく。


「……どうするんですか。あの城が拠点みたいですけど」


 キリにそう言われて俺も我に返る。どうやら俺達も城に突入しなければいけないようである。


「行きましょう……あの城に」


 城の周囲は何もない荒野だった。ここに城がある事自体に違和感がある。物陰の少ない場所なので充分に注意しながら俺達はラティアとカイを追った。


 そして、ラティアはカイの案内の通りに城の中へ入っていってしまった。


「……あ、姉上……アスト! 早く姉上を追うぞ!」


 リアが慌ててそう言う。しかし、あまりにも中の状況がわからなすぎる。この状態で城の中に入るのはかなり危険だが……


「……お前が行かないならここからは俺一人で行くぞ」


 と、そう言って城に向かって歩き始めてしまったのは……アッシュだった。


「アッシュ! ダメです! 危険すぎます!」


「……じゃあ、何か!? ここまで来て街に引き返すっていうのかよ!? あの城にホリアがいるんだ! お前らに感謝はしている……だが、ここからは俺一人で行く!」


 アッシュはそう言って走りだしてしまった。


 確かにアッシュの言う通りだ。ここまで来て街へ引き返すこともできない。何よりラティアが城の中に入ってしまった……


「わ、私も行くぞ!」


「え!? ちょ、ちょっとリア!」


 リアもアッシュを追って走り出してしまった。


「……で、どうするのよ。アスト」


 メルが呆れ顔で俺を見る。ミラもキリも、俺に決断を迫る視線を向けてくる。


 いや……ここまで来たらわかっていたことだ。もはや、後戻りはできないのだ、と。


「……行きましょう。皆、お願いします」


 俺の言葉を待っていたとばかりに、残ったメンバーたちも城に向かって走り出したのであった。

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