第156話 勇者姉上
作戦開始となって、いよいよ準備が必要になった。
まず、はじめなければいけなかったのは、ラティアの格好を変更しなければいけないということだった。
いつもの白銀のドレスではさすがに冒険者に見えないだろうということで、俺達――といっても、付添で俺とリアだけであったが――は街の装備屋に向かった。
相変わらず装備屋も元気はなかったが、装備自体は揃っていた。
「で、我はどのような格好をすればよいのだ?」
ラティアに聞かれ、俺も困ってしまう。実際、ラティアにどういう格好をさせればいいのだろうか……
「それはもちろん、私と同じような格好をするのが、姉上にとっても一番良いだろう?」
リアが俺に聞いてくる。と、ラティアはなぜかリアの装備を見つめている。
「姉上? どうかされましたか?
「リアよ、お前の装備、我に貸してみてくれないか?」
ラティアに言われて最初は戸惑ったリアだったが、その場で上半身の胸当てを外す。
そして、リアに手伝われながらラティアはリアの胸当てを装備してみた。
「おぉ! 似合っています姉上!」
リアは感動しているが、ラティアはイマイチ納得できていないような表情だった。
「ラティア、何か問題が?」
「あぁ、いや……この装備、少し、キツイな」
ラティアが少し遠慮がちにそう言う。俺は思わずラティアの胸部とリアの胸部を見くらべてしまう。
「な、何を見ているんだ、アスト! 見るんじゃない!」
「す、すいません……」
リアが顔を真っ赤にして怒るが……確かに身長はそこまで変わらない二人だが、違いがある部分のようだった。
「……やはり、ラティア用の装備を購入したほうがいいですね」
「あぁ、すまないが、そうしてくれ……リアよ、どうした?」
リアは不満そうになぜかラティアの胸部を見ている。俺は、なんだか悪いことをしてしまった気分になってきてしまった。
そして、結局、ラティアにはリア同様に勇者用の装備一式を購入した。購入すると共に胸当てや剣を装備したラティアは……結構勇者っぽい格好になっていて様になっていた。
「どうだ? 冒険者に見えるか?」
まるで買ったばかりの服を見せびらかすようにラティアは俺とリアに向けてポーズを取る。
「か……カッコいいです! 姉上!」
先程までの機嫌が悪い状態はどこかへ行ってしまったようで、テンション高めにそう言うリア。
「そうか。ならば問題ないな。これで、お前たちの役に立てる……そうだな、アスト?」
不敵な笑みを浮かべてそう言うラティア。俺は小さく頷く。
「えぇ……後は、作戦を実行するだけです」
こうして俺達はインキュバスをおびき出すための作戦を決行することになったのだった。
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