第84話 凍った場所で
「レイリアの娘って……え? あの……レイリアですよね? 俺達を襲ってきた。そのレイリアに娘が?」
リアは申し訳無さそうに頷く。
「……でも、アイツの話を聞いていると、とても自分以外は信用しないって感じのやつだったけど、そんなヤツが娘なんて作るのね」
メルが冷静にそう言う。確かに……戦った俺だからわかるが、あのレイリアに娘がいるとは、リアにそう告げられても実感が沸かない。
「……そうだな。しかし、姉上は間違いなく、レイリアの娘だ。姉上自身もそれは自覚している」
「そ、そうなのですか……それで、その……リアのお姉さんは、どういう感じの人物なのですか?」
俺がそう言うと、リアは少し言いづらそうに口を閉じた。なるほど……あまりリアが語りたくない人物のようである。
「……まぁ、実際に会ってみればわかるでしょ。早く行きましょ」
と、メルがそう行って城の方に向かって歩き出す。
「あれ? ヒーラーさん、お城、怖かったんじゃないの?」
「はぁ? もうそんなこと言ってられないでしょ。ほら、行くわよ」
ミラのからかいを適当に対応し、メルは進んでいく。俺達も同様に不気味な城を目指して進んでいく。
城の正面までたどり着いた。おおよそ、誰も手入れをしていないのか、城門も荒れ果てており、辺り一面、草が伸び放題である。
「……とにかく、行きましょうか」
俺がそう言うと共にそのまま城の中へと進んでいく。そして、どうやら城の入口らしき大きな扉の前にやってきた。
「……リア、入って大丈夫なのですか?」
俺がそう言うとリアは少し難しい顔をしていた。しかし、それから程なくしてゆっくりと頷いた。
「……あぁ。だが、皆、少し覚悟しておいてほしい。中に入ると結構、驚くと思う」
リアの言っていることがわからず思わず俺達は顔を見合わせてしまった。といっても、別にリアはこういう状況で冗談を言うタイプではない。
ということは……城に入ると驚くべきことが待っているということか。
「……わかりました。では、入りましょう」
俺がそう言って、城の中へとつながる扉を開く。
「……え? これって……」
入った瞬間、リアが言っていたことの意味がわかった。
城の中は一面……凍っていたのだ。壁も廊下も、柱も全てが凍っているのである。外とはまるで様子が異なり、温度もかなり低い。
「うわぁ~……これは……すごいねぇ」
珍しくミラが興奮気味にそう言う。俺もメルも驚きすぎて言葉が出なかった。
「……姉上は純血の吸血鬼にして、氷魔法の使い手だ。しかも、かなり上級の……姉上がいるだけで周りの気温が下がり物が凍りだすから、こうして一人で城に籠もっているんだ」
……なるほど。戦ったからわかるが、あのレイリアの娘だけあって、その能力はかなり高いものであるらしい。
しかし、こうなると問題となってくるのは……
「リア、はっきり聞きますが……お姉さんとはどういう関係なのですか?」
俺がそう言うと、リアはまたしても答えにくそうな顔をする。
「その顔……仲が良いって顔だねぇ」
「……アンタ、どうしてそう思うわけ?」
「だって~、キリちゃんはいつもウチとの関係を誰かに聞かれると、そういう顔をするよ~?」
呑気にそういうミラの話を聞いていると少し心配になる。
だが、リアが敵対関係にあると言わない辺り、そこまで関係は悪くないのだろうか? それに慕っていると言っていたし……だとすると詳細を話さないのはなぜだろう?
「……とにかく、姉上がいるとするとあの部屋だ。着いてきてくれ」
俺がそんなことを考えている間に、リアはそう言って歩きだす。こうして俺達は凍った城の中を探索するように進み始めたのであった。
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