第83話 姉なるもの
「え……ここ……入るの?」
メルが完全に青ざめた様子でそう言った。そう言われてもリアがそう言うのだからここに入らなければならないだろう。
「……メルは外で待っていますか?」
俺がそう言うとメルはムッとして俺の事を見る。さすがに外で一人で待っているというのは嫌なようだ。
「えっと……リア、中に入って大丈夫なんですか?」
俺がそう聞くと、リアは何やら考え込んでいた。
「……リア?」
「え? あ、あぁ……問題ない……と思う」
「思う……というと、やはり中には……危険が?」
「危険……はないと思う……おそらく、この城の中にいるのは……一人だけだ」
「一人だけ? リアのご両親がいるのではないのですか?」
俺がそう言うとリアは少し黙ったあとで覚悟を決めたように俺の方を見る。
「……母と父は、レイリアの力を私の身体の中に封じるので力を使い果たしてしまった……だから、もうこの城にはいない」
……思いっきりリアの地雷を踏んでしまった俺は思わずメルとミラを見る。ふたりとも苦笑いで俺のことを見ていた。
「……すいません、リア。その……配慮が足りませんでした」
「いや、別に謝ることないんだ。私の両親はいないんだが……私の姉がいるんだ」
姉……そう聞いて、予想外の存在がいたことを知り、俺は驚いてしまう。
「へぇ~、勇者サマにもお姉さんがいるんだねぇ~。ウチと一緒じゃん」
「ミラ……って、え? ミラ……妹じゃなくて……姉がいるのですか?」
「え? あぁ~、うん。キリちゃんは妹だけど、ウチにもお姉さんがいるんだ~。ウチは三姉妹ってことだねぇ」
呑気にそういうミラ。ミラの姉……ちょっと想像できない人物である。
「あ、あぁ。そうなんですか……って、それは今はいいとして、リア、お姉さんがいたんですか?」
俺がそう言うとリアは少し申し訳無さそうに顔を曇らせる。
「……私の本当の姉ではない……血はつながっているがな」
「……それって、どういう意味です?」
俺がそう言うと、リアは言いにくそうに顔を歪めたあとで、思いつめたように先を続ける。
「私が姉と言って慕う人物は……レイリアの娘だ」
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