第64話 本気……?
「次はどうするの~?」
ミラが退屈そうにそう言った。確かにミラの言う通り、すでにアッシュのパーティの魔法使いであったキリは逃亡してしまっていて、ミラの対戦相手は存在しない。
「ど、どうするって……」
アッシュも困っているようである。
「こういうのってさぁ~、不戦勝になるんじゃない?」
ミラはニヤニヤしながらアッシュの方を見る。確かにミラの言う通り、このまま決闘自体が行えないのだとすればそうなっても仕方ないとは思うが――
「荷物持ち!」
と、アッシュは乱暴にそう叫ぶ。メディは怯えたようにビクッと反応した。
「え……な、なんですか?」
「テメェ……少しは治癒魔術以外の魔法も使えたよな?」
「え……そ、それはそうですけど……」
「だったら! お前があの魔法使いと戦え!」
「え、えぇ……!?」
……さすがにそれは無理だろう。確かに、ヒーラーの中には普通にそれ以外の魔術を使える人もいて、魔法使いとヒーラーの役割を兼ねている人もいると聞くが……
「アイツに勝ったらお前を正式に俺のパーティに魔法使いにしてやる! それでいいだろ!?」
メディはそれを聞くと、急に顔つきが変わった。そして、ミラの方に向き直る。
「……わかりました」
そう言うとメディはミラの方に向かっていく。そして、ミラの前に立つと、杖を構え、対決する姿勢を見せた。
「へぇ~。やる気なんだぁ~」
なぜか少し嬉しそうにそういうミラ。
「……はい。私だって……パーティに加入したいので」
「なるほどねぇ~……ねぇ、アスト君?」
と、急にミラは俺のことを呼びつける。
「え? な、なんですか?」
「ウチ、どれくらい本気出していいの?」
「え、本気って……」
俺はここで想像してしまう。もし、ミラが本気を出すとなると……メディが無事でいられるかわかったものではない。
ただ、よく考えればメディはヒーラーだ。しかも、それなりに腕が立つ。
仮に状態異常にさせられてもメディ自身が治すことができるのではないか?
だとすればむしろ、この勝負、ミラの方がフリに思えるが……
「……ミラさんの好きなようにすればいいと思います」
そこまで考えて俺はミラに返答した。すると、ミラは邪悪に微笑んだ。
「へぇ~。好きにしていいんだぁ~」
そう言うとミラは、まるで俺のその返事を待っていたかのようにメディに向けて杖を構える。
「じゃあ……好きにするから」
一抹の不安を覚えながらも、こうしてミラとメディの戦いは始まってしまったのだった。
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