第45話 復活
「ア……スト……アスト!」
……リアの声が微かに聞こえてきて、俺は意識を取り戻した。
しかし、身体が動かない。視線だけ動かしてみると、たしかにみごとに切りつけられているようで、結構血が出ていた。
というか……おそらくこれは瀕死の重症だろう。ただの回復魔法では助からない。
「メル! 早くアストを助けてくれ!」
泣きながらリアが叫んでいる。メルがフラフラとこちらへやってくるのがわかる。
「無理よぉ。もう助からないわ。それこそ、死者を蘇らせる術を使わない限りはねぇ」
ネクロマンサーの声が聞こえる。メルは思いつめた様子で俺のことを見ている。
「メル! 早く!」
リアが急かすが、メルは動かない……いや、動けないようだった。
「どうするのぉ? 助けてあげないのぉ? ふふっ……そうよねぇ。そうやって迷っているうちに、アナタは仲間を私に取られちゃったんだものねぇ」
……迷っている? メルは迷っているっていうのか? 確かにメルの表情は少しおかしかった。
「いいのぉ? その人を蘇らせるってことはぁ……私と同じ化け物ってことよぉ?」
ネクロマンサーの言葉にメルが如実に反応する。なるほど……メルが回復魔法を……そして、自身だけが使える蘇生の魔法を使わない理由がわかった。
メルは悔しそうに俺のことを見ながら目に涙を貯めている。しかし……俺にはもう時間がない。
それならば――
「……メルさん」
俺はとっさにメルの手を掴む。
「え……アンタ……」
「……アナタは、アイツとは違います。俺は……そう思います」
「え……な、なんで……」
「アナタは……俺の仲間だから」
俺の本心を伝えると、メルはしばらく驚いていたが、小さく頷いた。
そして、その手にした杖を俺に向ける。杖の先端から光が優しい溢れ、俺の身体を包んでいく。
すると、次第に痛みがなくなっていき……最終的には俺の怪我はまるで最初からなかったかのように失くなってしまった。
「アスト! 大丈夫か!?」
「……えぇ、大丈夫ですよ。リア、メル……少し下がっていて」
俺はそう言って立ち上がり、ネクロマンサーとゾンビパーティに対峙するのだった。
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