第30話 不機嫌なヒーラー
「あ……ど、どうも……」
「……で、私に何か用?」
「その……リアとの決闘……取りやめにしてもらえませんかね?」
「嫌よ」
まるでとりつくシマもないという感じでピシャリと拒否されてしまった。これには俺も苦笑いするしかない。
「どうしても……ダメ、ですか?」
「当たり前でしょ。アイツ、自分が雑魚だってわかってないのよ。私、そういう馬鹿が一番嫌い」
言葉に棘しかないが……まぁ、リアは自分の強さをあまり理解していない節も在るような気がしないでもない。
かといって、それで決闘をされてしまうのはそれはそれで困るのだが……
「い、いやぁ~、でも……それで、どっちが怪我とかしちゃうのも、馬鹿らしいじゃないですか?」
「そうね。アイツが私にボコボコにされちゃったら、特別に回復してあげてもいいわよ」
と、そこまで言うとなぜかメルは鋭い目つきで俺のことを睨む。
「……っていうか、その言い方だと、私があの馬鹿に負けるかもって、アンタ思っているわけ?」
「え……あ~、いや……それは……」
「……ま、どうでもいいけど。っていうか、別にアイツとの決闘なんてどうでもいいのよ。そもそも、私はアンタに用事があったんだから」
そういえば、メルは最初俺に用事があると言ったのだった。それなのに、なんでリアと決闘することになっているのかは謎だが。
「用事って、なんですか?」
すると、メルは急に真面目な顔になって俺のことを見る。
「アンタ……どうやって生きて帰ってきたの?」
「え? どうやって……何のことです?」
「だから、あの魔法使いのこと。アイツ、アンタのこと殺そうとしてたでしょ? 私はてっきりアンタとは二度と会うことはないと思ってたから」
「え……あ、あぁ……それは運が良かったというか、なんというか……」
俺が適当にごまかそうとしても、メルはまるで責めるように俺を見つめ続けている。ものすごく居心地が悪かった。
「……あの魔法使いに聞いてもイマイチわからなかったけど、私はアンタが何かを隠しているって確信しているから。あの馬鹿との決闘が終わったら、アンタ、私に付き合いなさい」
「え……付き合うって……何に?」
すると、メルは口の端だけを上げて涼やかに微笑む。
「それは私がアイツに完勝してから教えてあげるわ。じゃ、また明日」
そう言ってメルは行ってしまった。なんだか……リアよりも俺のほうが不味い状況に立たされているのではないかとなんとなく思ったのであった。
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