第29話 証明
「フンッ! 馬鹿なやつだ。どんなにレベルが高くてもアイツはヒーラー……勇者である私にかなうわけがない!」
リアは自信満々にそう言う。確かに、メルはレベル93とはいっていたが、ヒーラーだ。たぶん攻撃力自体はそこまで俺やリアと変わらないはずだ。
だから、おそらくリアが大怪我をするってことはないとは思うが……俺にはどうにもメルが何も考えなしにリアの決闘を受けるとは思えない。
「まったく……今日はなんだかやる気がなくなってしまった……アスト。もう酒場に行こう」
「え? いいんですか? っていうか……リア、本当に決闘をする気なんですか?」
「当たり前だ。私は馬鹿にされたんだぞ? このパーティの勇者として、私が雑魚ではないことを証明しなければ!」
リアは完全にやる気のようだった。しかし、俺としては……そんなことを証明するために、仲間と決闘なんてしてほしくないのだが……
「……いえ、今日は俺も帰りますよ」
「え……そ、そうなのか? ……な、なんなんだ! 私が悪いわけではないだろう! アイツが先に喧嘩を売ってきたんだぞ!」
「そうだとしても……リアは、それを受けるべきではありませんでした……」
俺はそう言いながら、自分に問いかける。
俺に……そんなことを言う権利があるのだろうか。いや、むしろ俺は……今のリアがまるで……以前の俺みたいに見えているからこそ、嫌なのだろうか……
「もういい! 私は一人で行くからな!」
リアはそう言って不機嫌なままに行ってしまった。
「……って言っても、行く場所もないんだよなぁ」
リアと別れた後、かといって、俺も寝床に戻るわけにも行かず、ギルドに戻ってきてしまった。
リアは完全にやる気のようだったし、今何を言っても聞き入れてもらえなさそうだった。
そうなると、メルの方になんとかして決闘をやめてもらうように言うべきなのだろうが……
「……メルさんもどこに行っちゃったのかわからないないしなぁ」
「何? 私を探してんの?」
後ろから声が聞こえて俺は思わず驚いてしまった。問題の張本人であるメルが仏頂面で俺のことを見ていたのだった。
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