第19話 深奥へ

 まさかの話の展開に、俺は思わず黙ってしまった。てっきり、自分と同じ境遇だと思ってしまったのが少し申し訳ないくらいだ。


「あ……それは……なんというか……」


「あぁ。気にしないでいいって。とりあえずダンジョンの中に入ろうよ」


 ミラはそう言ってダンジョンの中に入っていく。俺もそれに続いてダンジョンの中に入った。


「……あれ?」


 ダンジョンの中に入ってすぐに気付いたのだが……モンスターの気配がまるでない。前の廃坑と同じである。思わず俺はミラを見てしまう。


「言ったでしょ? 前のパーティでも来たことあるって。その時にモンスターはほとんど倒しちゃったんだよね~」


 呑気な笑顔でそういうミラ。つまり狩り尽くしちゃったからモンスターはいないってことか?


「それじゃあ……ボスだけが倒せなかったってことですか?」


「その通り。だから、今からアスト君と一緒にそのボスを倒しにいこー、ってことよ」


「……あの、俺さっき見せたとおり、レベル10ですよ? 前のパーティの平均レベルってどれくらいだったんですか?」


「ん~? 80レベルくらいかな?」


「80って……そんなの、どう頑張っても俺じゃ倒せないじゃないですか……」


「倒せないね、普通じゃ」


 そう言うとミラは俺のことを舐めるような視線で見つめてくる。


「でもぉ~……この前のオーガみたいに、アスト君がいきなりすごいパワーを出せば、倒せるかもしれないじゃん」


 ヘラヘラ笑って見せているが、目だけは笑っていなかった。


 どうやら、どうしてもミラは俺が何かしらの力を持っていることを隠していることを確認したいようである。


 もちろんそんなことをされては俺は……困るのであるが。


 かといってダンジョンを出ていくわけにもいかず、俺とミラはどんどん奥深くへと入っていった。

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