第92話
「……さて、どうしたものか」
悩みなど、多くは解消されつつある。
「まあ、変わらないか」
本来の計画では
上手く行きすぎて笑いが込み上げてしまいそうな程に。
だからこそ、念入りに不安要素は潰さなければならない。
「いつも通りだ」
Project:Aの出資者を殺した時のように。
捜査の手が既に喉元まで伸びてきている。先程のフィンの一件がそれだ。
だから、撹乱しよう。
「さて……一先ず、スタジアム周辺とサウスストリートに人員を送れ」
様々な場所で事件を起こせば人を割かねばならなくなる。
どんな手を持ってしてもデウス・エクス・マキナは完成させる。
指令を送って数分、椅子に座っていると、携帯電話に着信あり。
「……オスカーか」
画面を見れば、相手はオスカーである事が理解できる。これはエイデン以外には特定することのできない相手だ。
『エイデン、そっちはどうだ? 上手くいってるか?』
近況についての質問が飛んでくる。
「ああ、上手く行きすぎなくらいにな」
ふと、エイデンの頬が緩む。しかし、仕方がないだろう。ここまで思い通りに動いては嬉しくないわけがない。
『そうかそうか。そりゃあ、良かった』
だから。
『オレも、自由にやって良いんだろ?』
楽しみたいと、欲望を満たしたいと願っても良いだろ。
電話の向こうでオスカーは嗤う。
「エンジェルさえ無事なら構わないさ」
計画の鍵となったアリエルさえ奪われる事がなければ、何をしたって問題はない。既にこの段階まで来たのだから。
『……ああ、分かってるよ』
オスカーの答えに満足をしたのか、エイデンは「用はそれだけか?」と質問を返す。
『ん? ああ。オレからはな』
「そうか。ならば構わないが……」
スタジアム周辺にオスカーを向かわせるか考えたが、 アリエルの監禁に頼ったこともある為に今回の事を任せるのは躊躇ってしまう。
既に立場のリスクを負った仕事をしているのだ。
『どうした?』
エイデンの何かを言いたげな雰囲気を察したのだろう。
「……いや、何でもない。自由にしてくれ」
これ以上、オスカーがファントムの一員である事が知れるリスクを上げる必要はない。オスカーからエイデンへと辿り着かれる可能性もゼロではないのだから。
『そうか。じゃあ、そんだけだ。最後に、エイデン。アンタの
「ありがとう、オスカー」
純粋な好意と受け取りエイデンは感謝の言葉を述べる。
「コーヒーを淹れようか……高級品を」
電話を切って、彼は徐に立ち上がり呟いた。アリエルがエクス社を訪ねてきたあの日のインスタントコーヒーとは格別なものを用意しよう。
計画の成功を祈り、優雅にブレイクタイムを嗜む。
窓の外、夕日は沈んでいく。
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