第11話:軍人の休日
「まあまあ、やっと任務を終えて帰って来たばかりなんですし、辛気くさい話はやめて、パーッと遊びに行きましょうよ」
隣で話を聞いていたセイラが、二人の間に割って入った。リオンとしては、そんな話をしているつもりは無かったのだが、セイラにとっては暗い話に聞こえるらしい。
「そうだな、パーッといくか」
カイが同調する。
「お前は任務明けでもないだろうが。働け」
リオンはカイに冷たく言い放った。
「いいじゃないですか、お二人とも団長なんですから、お仕事は団員がやってくれますよ」
「お前は団長をなんだと思ってるんだ。俺たちは俺たちで、やることがたくさんあるんだよ」
リオンはあきれてセイラの顔を見る。
「ちょうどこれから帝国議会で、議員のお偉いさん方に、任務の報告に行くが。セイラがかわりにやってくれるか?」
リオンが言うと、セイラは慌てて手を横に振る。
「私、あの人たち苦手なんです」
続けて小さくこぼした。
「報告といっても、すぐ終わるだろう。嬢ちゃんの言う通り息抜きは大事だぞ」
カイが取りなすように言った。
嬢ちゃんって呼ばないでくださいよ、とセイラは不満げな顔をする。こども扱いされているようで気に食わないらしいが、長い間カイはセイラのことをそう呼んで変えようとはしなかった。
「それで、何しますか? 久しぶりに市場へ行きますか? お洋服とか見たいです。あ、演劇を見に行くのはどうですか? ちょうどタリル旅団のお話をやっている劇団があったはずですよ」
期待を込めた目でセイラが二人を見る。
帝国の市民にとって、演劇は世の中の動きを知る貴重な媒体の一つだった。歴史を取り扱うこともあれば、最新の事件が風刺されることもあった。
「昔の英雄の話だろ。人気者の旅団の。セイラなんかは、自分たちとの差をつきつけられて、落ち込むだけだぞ」
答えるリオンはにべもなかった。そう言われて、確かにその通りだと思ったのか、セイラは肩を落とす。
「こういうときは体を動かすのが一番だ。リオン、後で闘技場に来い。久々に手合わせでもしよう」
名案を思いついた、とばかりのしたり顔でカイが提案する。
「こんなときまで訓練ですか。これだから軍人は……」
自分自身も軍人であるはずだが、セイラはそれを忘れたかのように、呆れて言った。
リオンも、特に何かやりたいことがあるわけではなかった。
「よし、その話、乗った。先に行って待ってろ。すぐ済ませてくるから」
そう言う残し、リオンは二人を置いてさっそく歩き出す。
もっと楽しいことやりましょうよ、と背後からセイラの声が飛んでくるが、リオンはそれを無視して皇城の奥へと進んで行った。
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