3章〜Love war〜

❤︎



「お疲れさん」


「ん。ちゃんと見てた?」


「見てた見てた」


 ノエルが頭の上に置かれた手に触れながら、ピョンピョンと跳ねる。


「ノエル手加減上手くなってる」


「んだな〜大きな成長だぞ〜後でお祝いしよな〜」


「やた」


 そんな彼らの元に数機のヘリが着陸し、中から報道陣が慌てて出てくる。


「お疲れ様ですミスノエル!今の心境を!」「ミスオリビアを撃破した感想を!」「あのオリビア・ハルモニアが負けたとあり、ハワイ中が物凄い騒ぎになっています!今からミスノエルにお話を伺おうと思います!」「物凄い戦闘でした!一言お願いします!」「あの治癒能力は何ですか⁉︎」「ミスターキリマサとはどういった関係でしょうか⁉︎」


「爛れた関係」

「おい」


「Ha!??」「!?」「what!?「Hoooo!!」「Ohho!!!!」「Nante!?」「Scoooop!!」


 盛り上がるシャッターとビデオカメラを鬱陶しげに、東条はノエルの頭をぐりぐりする。


「あぅあぅあぅ」


「She is あ〜……my family」


「ご家族だったのですか⁉︎血が繋がっているようには見えませんが?」


「あ〜、ほら、There are many forms of family, aren't there?」


I was just playing!ノエルとは遊びだったのね!

「おい」


「「「「「「I knew it!!!やっぱり!!!」」」」」」」


 東条はノエルを抱え尻を叩く。

 こいつはもう少しマスコミの面倒臭さを理解してほしい。いつもあしらうのは自分なのだ。今度報道局に置き去りにしてやろうか。


「じゃ、俺ら帰るんで」


「あ!」「ちょっと待ってください!」「まだ質問が!!」「ヘリ!」


 必死に追いかけてくる報道陣を無視し、スタスタと走る東条。


「そういや今日笠羅祇さんいなかったな?あの人ならどんなに危険でもお前の試合見に来そうなのに。……怪我思ったより深かったんかな」


「笠羅祇病院から脱走したって聞いた」


「は?」


「なんか刀直す!とか言って日本帰ったって」


「え、じゃああの人あの傷で新大陸走ってんの⁉︎」


「ん」


「バカじゃん⁉︎」


「バカ」


 ノエルを肩で揺らす東条は、確かにあの人らしい、と爆笑する。

 だとするとハワイの決勝進出組はどうなるのか?まぁあとはオリビアさんと、適当にG1らへんのが選ばれるのだろう。どうせならあの4人で出たかったが、仕方なしだ。


「さてノエル、今日は昨日の分も含めて祝勝会だ!どうする?」


「んん〜〜――ッ⁉︎……」


 とその時ノエルの身体ビク、と驚いたように固まる。


「ど、どした?」


「……マサ、降ろして」


「お、おう」


 何だ?反抗期か?

 東条が自分に背を向け走ってゆくノエルを見ながら、その場に立ち尽くしていた、


 ……その時、


「――っ」


 ……何だ?この、殺気?……ノエルにじゃない、……俺にか⁉︎


 バッ、と東条が天を仰いだ。



 ……そこに、彼女はいた。







「きぃぃりぃぃまぁぁさぁぁぁ――ッ君ッッ‼︎‼︎‼︎‼︎」







「――ッ⁉︎⁉︎」


 1年ぶりに炸裂した愛の踵落としが、山頂を放射状に大陥没、爆砕、大粉塵を巻き上げた。

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