22話
オリビアが疾駆し、
ルージュが羽ばたき、
地中が唸る。
自分に食らい付こうとする強者達を前に、
「……ふぅ」
ノエルは瓦礫に寄りかかりながら、一息ついた。
そのあまりの脱力感と余裕ぶりに、オリビアの本能がピクリと反応
「っ止まれディギン‼︎」
瞬間跳び退いたノエルの下から、大口を開けたディギンが飛び出し瓦礫を噛み砕いた。
今の一瞬、ノエルがディギンの口に何か落とした。
ルージュとオリビアは悟る。
「『誘われたっ』」
ディギンが再び地面に潜ろうとし、ノエルがほくそ笑む。……これで2匹目。
「たんと食え」
「キシュ⁉︎⁉︎」
ノエルが魔力を流すと同時に、ディギンの身体が膨張。
ビキビキビキッ、と鉄が砕ける様な音を響かせ、30mを越す巨体が過度の栄養供給により、綺麗な球体へと姿を変えた。
「キィシュオォォ〜〜………――」
ノエルに蹴り飛ばされ山を落下してゆくボールを目に、オリビアは苦虫を噛み潰した様に笑う。
してやられた。ノエルはわざと私の一撃を受けたんだ。防がれた時点で気付くべきだった!
地面に手を着けるノエル、
にルージュの爆炎が直撃する。
途轍もない熱量に周囲の岩石が溶解し、地盤が沈み始める。……だと言うのに、
「あちっ」
轟々と燃える炎の中、あろうことかノエルは樹木の盾だけでその攻撃を受け止めていた。
その光景に、漆黒を纏いマグマの中であぐらをかく東条も目を細める。
『……オリビア・ハルモニア、なぜ木材が私の炎を受け切れる?』
「知らないよ!火力落として、突っ込む」
オリビアの脚部が赤く輝く。
瞬間、
「立て、『
大地が鳴動し、突き出た巨剣が炎を薙ぎ払った。
咄嗟に前傾になるオリビア。
羽ばたき1つで急上昇するルージュ。
互いに一撃から距離を取った2人は、目を見開き固まる。
手を着き立ち上がる60mを超す巨体。輝く黒曜の身体。一振りで突風を起こす巨剣は、優にルージュの2倍のデカさを誇る。
上空のヘリでカメラを構えていた撮影部隊、全員の顎が外れた。
「フィツィロ」
〔ハイ、ノエル様〕
「「『っ⁉︎』」」
足元のノエルに跪いた巨神に、その場の誰もが目を疑う。今、喋らなかったか⁉︎
「ADの記憶と戦闘データは全て写した。どう?」
〔観測器のデータ、これまでの戦闘データ、アップロード完了。……ノエル様、循環魔力量が規定値を下回っております〕
「ドライアドに妨害されてる。問題ない。そのまま行け」
〔Copy.データ照合、オリビア・ハルモニアを認識。殲滅プログラムに移行します〕
「っ⁉︎」
「待て。殲滅じゃない、捕縛。それとフィツィロ、お前の相手は……あっち」
ノエルの指を辿ったフィツィロの黒い瞳が、上空の龍を映す。
〔Copy.標的を種族名:ドラゴンと認識。Level測定――7over.戦闘プログラム『カロン』を発動。捕縛を開始します〕
巨神が剣を大きく振りかぶり、……――振り下ろした
瞬間、
『ッな、に⁉︎⁉︎』
巨剣が瞬きで形を崩し、800mを越す土棒へと変化。
地上を見下ろしていた龍を海へと叩き落とし水蒸気爆発を打ち上げた。
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