衝動
……銀色の霧の中、ノエルは1人震えながら待つ。
自分のためだけに用意された、半径2mの安全領域。
1歩でも外に出れば、たちまち身体は崩れ死に至るだろう。
これの発生源にいる人間が、ただで済む筈がない。
ノエルは肌を刺す寒さに震え、ただ彼を想い、待つ。
……その時だった。
「っ、⁉︎」
天に向かって蒸気が吹き荒れ、銀世界が一気に晴れた。
遠くに見えるのは不定形に蠢く漆黒のモヤの塊。氷形態が解けている⁉︎
ノエルは一瞬で理解した。
マサのあの状態が解けたせいで、無理矢理下げられていた外気が急激に上昇、水蒸気爆発に似た現象が起きたのだ。
シューシューと音を立てる地面に1歩を踏み出し、足を引きずりながら、ノエルは恐る恐るモヤに近づく。
能力を解く方法は2つ。
1つは自らの意志で制御しての、解除。
もう1つは、
「…………マサ?、」
繊細な制御が困難な程に理性を飛ばす、及び、死。
「――ッギャハハハハハハハハハハッッ‼︎‼︎‼︎」
「っ、マサダメッ!、く」
地盤沈下で歪んだ大地を吹き飛ばし、東条
ノエルは漆黒に無理矢理しがみ付き、衝撃に目を瞑る。
海面を吹き飛ばし、海中を爆速で突き進むソレの目指す先には、人々の暮らす街がある。
嘗ての彼を冒険へと駆り立てたのは、偏に潜在的な戦闘欲と、それに付随する快楽。
――理性の無くなったソレは、破壊衝動そのものである。
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