〜Charon〜



 ――数刻前。


 内陸部から離れた離島の1つ。


 ふわりと降り立った2体の前に、ノエルを抱えた東条が盛大に着地した。


「罠か?」


「たぶん違う」


 東条はノエルを下ろし、歪な白骨を見定める。

 1体は山羊で、もう1体は鹿か?カッコいいな。殺したら部屋に飾ろう。見た感じ鹿が近接、山羊が魔法系。


 んじゃ俺は鹿だな。漆黒を纏い、足に力を込めようとした、


 その時、


「……?」


 山羊型が掌を前に出し、飛び出そうとする東条を静止した。


 2人が訝しむ中、山羊型はワンドをつき紳士的に一礼する。



「My name is '私の名は『カロン』Charon' I meet you for the fお初にお目にかかるirst time, Princess of the『大地』の姫君 'Earth'」



「「……」」


 ……あ〜、喋れるタイプね。


 東条の中の警戒度が100段階くらい跳ね上がった。


「This is also sこれも何かの縁omething.少しお話しでもいかがか?」


 ……うし。東条は腕をプラプラ足をプラプラ、首を鳴らす。


 ノエルの瞳が縦に割れ、立ち昇る魔力に髪が揺らめき始める。


「……There is nothing to話すことなんてない talk about」

「⁉︎」


 え、こいつ英語喋れたの⁉︎聞いてないんですけど⁉︎

 カロンとプリンセスくらいしか聞き取れなかったけど、何て言ってんだ?あークソっ、英語の授業真面目に受けとくんだった!


「Don't say tそう言うなhat.お名前を聞いても?麗しの姫君、」


「Stop using thaその気色悪いt creepy p言い回しをやめろhrase.……ノエル」


 カロンは血の様に紅い目を見開き、興奮した様に腕を広げる。


「Noel! 何と美しい響きか‼︎雪のように純白の肌を持つ貴女に相応しい名だ。ああ美しい、羨ましいenviable、欲しい、欲しい!」


「……」「ふっ、ふっ、」


 腰を捻り、屈伸屈伸。

 エンヴィーってあれだろ?鋼錬のアイツだろ?要するにこの変態は幼女に嫉妬してるヤベー奴ってわけだ。

 ……壁に飾るのやめよ。


 カロンはうっとりとノエルを、そしてこの国を見回す。


「……This is a good pここはいいlace.奴隷も、食糧も、文化も、技術もあるというのに、とても住みやすい」


「……」


「This is the power oこれが『王』の力f the 'King.……素晴らしい」


「……Shut up」


 ノエルの瞳が揺れる。


「……Butだと言うのに,貴女はこの現状に満足している。なぜ人間の味方をする?なぜ他種族を支配しない?っなぜ君臨しようとしない⁉︎」


「……」


「……Ah、美しく、そして愚かな姫君よ。……貴女は王の器ではな――


 ――瞬間、


「――コ


「……」「……」


 ぼー、と立っていた鹿型の姿が消える。

 同時にノエルとカロンの横を雷鳴が吹き抜け、青白い雷光がバチバチと足跡を残す。


「――悪りぃなぁッ!白相手には油断しねぇって決めてんだわァ‼︎」

「ッンゴゴゴゴゴ――


 雷装を纏った東条は、鹿の顔面を地面に叩きつけ爆速で引き摺り回す。顔面が無くなったソレを振り上げ、


「ゥオラァッ――ッハハァ‼︎」


 山に向けてぶん投げ跳躍、めり込んだ骨目掛け飛び蹴りをかました。


 轟音、爆散、森林破壊、環境省涙目。


 山を貫通した東条はビーチに着地。


「まずは1匹」


 ゴスゴスと降る土砂と岩の中、骨の残骸を踏み砕いた。


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