I'll kill for you.
「あらぁ、凄いなぁ」
いよいよ人間も人間を辞め出したらしい。
遠くの島で天に向かって吠える巨熊の威容に、紗命は軽く笑う、
「……」
見定めるように。
本作戦中、藜同様、彼女には特別に自由行動が約束されている。
故に最初の持ち場のモンスターを早急に殲滅した紗命は、現在、声すらかけずに飛び出して行ったボーイフレンドを叱るため、東条を追って最前線の海岸をテクテクと歩いていた。
「まったくもぅ、どこまで行ったん」
歩いても歩いても人とモンスターの死体だらけ。
恐らくどこかの離島にいるとは思うのだが、あり過ぎて見当がつかない。
こんな時あのゴリラ女の魔力感知範囲があれば一瞬なのに……。
紗命はそんなことを考えてしまった自分の頬をペチペチと叩き、脳内に現れた灰音を殴り殺す。
(……そういえばあの女、この前桐将と水族館デートに行っとったなぁ。桐将はうちらをぶつけへんよう隠しとるみたいやけど、夫婦の間に隠し事なんてあかんと思うんよぉ)
紗命は飛び掛かってくるモンスターを、浮かべた水球で溺死させながら頭を悩ませる。
「……はぁ」
(GPSは見つかって怒られてもうたし、これじゃあ精神の監視は出来ても、行動の監視が出来ひんわぁ。……まったく、あの女がいーひんかったらこんなんに悩む必要のうなるのに、)
「……もういっそ、戦死に見せかけて殺してやろうか(ボソ)」
一瞬影が落ちた彼女の表情に、周囲のモンスターの肌が粟立つ。
「……あーもうっ、あかんあかん、また桐将に怒られてまう。……はぁあ」
紗命は逃げようとするモンスターを水の触手で捕まえ、体内を水流で蹂躙しながら大きく溜息を吐く。
……あの女も、あの
ほんま、いけずなお人やわぁ。
恋人の自由奔放ぶりに呆れる紗命は立ち止まり、
「まぁ、うちは桐将のためだけに動く。それだけやわぁ」
「……コポポポポぽ」
目の前に現れた不定形な女性を、クス、と見下すように笑った。
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