3章〜人魔大戦〜
平和
冬の知らせを香らせる透き通った空気と、ガラスの様に張り詰めた青空。
11月に入った日本は、比較的穏やかな気配に満ちていた。
クリスマスを機に一気に増加した小規模な魔法犯罪も落ち着き、モンスターによる被害報告も最近ではめっきり聞かなくなった。
取り締まる側の力が格段に強くなったのも理由の1つだが、
皆気づいたのだ。結局力とは、才能と、才能を持つ者の努力に依存する。
魔法軽犯罪者の多くは、若者の火遊び程度の動機しかない者が多数。
自分に才能が無いと知り、厳罰が下ると知れば、自ずと馬鹿な真似をする者も減る。
モンスターの被害も、危険区域から離れてしまえば今までと殆ど何も変わらない。
モンスターが出てこない保証は無いが、魔素の薄い場所に自ら移動してくるモンスターは余程の強者か物好きだけだ。
そんな不安の種も、調査員や政府によって迅速に刈り取られる。
結局、今までと何も変わらないのだ。
軽犯罪は日常茶飯事だし、危険な人間は今も一般社会に溶け込んでいる。
そしてそれを防ぐのは、いつだって力ある者だ。
自分達じゃない。自分達凡人は、今まで通り普通の生活をすればいい。
学生は制服を着て黒板を前に居眠りをし、
社会人は憂鬱になりながら会社に足を運び、
ニートは惰眠を貪りネットサーフィンに時間を浪費すればいい。
それは何も悪い事ではない。そのぬるま湯こそが平和であり、秩序だ。
それが人間の行き着いた場所であり、その人間に造られたのがこの社会だ。
悲観などしなくていい。結局最後は、これが普通だと思うようになる。
楽しめばいい。自分達の預かり知らぬ場所で、知らない人間が戦ってるだけだ。
人は、欲望には勝てないのだから。
……ただ、これだけは覚えておいて欲しい。
有事の際、最も先に被害を被るのも――君達弱者であると。
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