有栖&ユマ
「ああもうっ、なんでバレてんの⁉︎」
「政府の中には、我々をよく思わない輩も少なくないですからね。それらの仕業でしょう」
力の限り台パンする有栖は、外から聞こえてくるマスコミ達の声に頭を抱える。
日本で1番有名な2人と手を組んだのだ。いつかバレるのは覚悟していたが、ここまで早いとは正直思っていなかった。
「マサくん派手に死にかけてるしっ、ノエルちゃん電話出ないしっ、見美さん忙し過ぎて頼れないしっ、もう嫌だぁ」
怯える有栖に、ユマは優しく笑いかける。
「いかが致しますか?宜しければ蹴散らして参りますが」
「……ユマさんってたまに怖いよね?」
「私の使命はこの居宅を守る事です。害成す者は等しく潰します」
優しい笑みから漂う邪悪なオーラに、有栖は身震いする。
「……じゃ、じゃあ暴力はなしで、追い払ってくれる?暴力はなしで」
「承知致しました」
そう答えたユマはビデオカメラを持ち、ニコニコと部屋を出た。
――「マサさんとノエルさんにお仲間がいらっしゃるというのは本当ですか⁉︎」「中にいるんですよね⁉︎」「1度お話を!」「特区で亡くなられた方達に何か!」「今も苦しんでいる人がいるのに、殺し合いをエンターテイメントとして配信するのはどうなんですか⁉︎」「先程のライブ配信も子供が見ていい内容ではないと思うのですが!」
「……家の中を覗ける場所は?」
「ありません。防衛設備が完璧過ぎて、……これもう要塞ですよ」
マスコミの1人は、同乗者達を阻む重厚な扉に溜息を吐く。
外壁は見上げる程に高く、虫の入る隙間もない。
風の噂だと、侵入を試みた物好きが、五体不満足で出てきたなんて話もある。
面白いリーク情報があったとは言え、これに入るのは不可能だろう。
とその時、
「ん?――っ」
外壁の上で何かがキラリと光ったと思った瞬間、空から1人の女性が降ってきた。
全く音を立てずに着地した彼女に、誰もがギョッとした視線を向ける。
「……こんにちはマスコミの皆様。少々喧騒が過ぎますので、あなた方の人生を終わらせに来ました」
ユマは屈託ない笑顔を浮かべ、手に持ったビデオカメラで1人1人の顔を映してゆく。
大半の者がそれだけで顔を逸らす。人の個人情報は平然と拡散するくせに、自分事になった途端これだ。
「はいぷち、ぷち、ぷち――」
「⁉︎」「⁉︎」「あ⁉︎」
ユマは目にも止まらぬ速さで手を動かし、ボイスレコーダーやカメラをプチプチと握り潰してゆく。
そうして全員の記録媒体を破壊した後、
「では皆様、二度とその面見せないで下さいませ」
跳躍して元来た場所から敷地の中へと戻るのだった。
「有栖様、少々パソコンをお借りしても?」
「え?うん、良いですけど。……何を?」
ユマは持って来たUSBをパソコンに挿し、カメラと同期させる。
「顔から個人情報を特定してネットに拡散します。その後大元の会社にウイルスを流し込んで、……自宅に大量の配送物を依頼するのも面白そうですね。ふふふふ」
「……」
笑顔で次々と個人情報を特定してゆく彼女を、有栖は恐ろしげに、しかし興味心身と眺める。
「……すご、どこでそんな技術」
「ノエル様に一通り叩き込まれました。事一般人相手ならこのやり方が1番有効だから覚えておけ、と」
「……恐ろしい子」
というかネットの海は自分の分野なのだ。そこを取られたらアイデンティティが消えてしまう。
焦る有栖は画面を注視し、彼女のプログラミングコードを添削する。
「……あ、それ使うより、こっちのウイルス使った方が効果あるよ」
「なるほど。こうですか?」
「そうそう。遅延、妨害、破壊、目的によって使い分けなきゃ」
「流石有栖様。勉強になります」
「ふふん」
そうして始まる、楽しい楽しいウイルス拡散。
後日、大元の会社では全サーバーのシステムが狂い、その原因となった彼等は職を失い、電話にはカオナシとノエルのファンがイタ電をしまくり、家には100枚のピザが届いたという。
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