四章 終結
19話
――「おいどないする⁉︎」
「軍の奴らそこまで来てんぞ‼︎」
「黙れ気づかれんやろ!」「おい静かにせぇ!」
「外にはモンスターもいる。問題ないっ」
「あいつら見たろ⁉︎今頃全滅しとる!」
「黙って手ェ動かせいてこますぞ‼︎」
十数人の組員達が、一部屋に集まりバリケードを作っていた。
返り討ちにしようとした仲間は全員殺された。
50匹近くいたモンスターも全部殺された。
彼らは焦る手で、必死に扉の前に物を運ぶ。
(舐めとったっ、日本の特殊部隊を、完全に舐めとったっ)
後悔しても、もう遅いというのに。
「……あ?――」
「「「――ッ⁉︎」」」
瞬間、近くにいた組員ごと、金属製の扉が吹っ飛んだ。
同時に土煙の中から、乾いた音を立て何かが転がってくる。
「ッグレネー
――閃光
続く数秒間の銃声。
薬莢が落ちる音が、静かになった部屋の中に反響する。
土煙を開き、五つの影が姿を現した。
「クリア」
「クリア」
「クリア」
「生存者一人。重症です」
王山は血を吐く組員に近寄り、しゃがむ。
「……魔法が多少使える奴に限って油断する。集中が切れちまえば、鉛玉一つで人は死ぬんだよ。今も昔もそれは変わらねぇ」
「ヒュー、ヒュー……」
「一つ聞きたいんやけど、お前らが捕えた一般市民は、まだどっかに生きてたりすんのか?」
「ヒュー、ヒュー、もう、いぃひんと思う。全部、ボスが実験に使っちまった。ヒュー」
「そうか。氷室」
「なぁっ、助けてくれ!何でもするから!」
「何でも?」
氷室は微笑みながら、男の顔を覗き込む。
「あ、ああ!何でも、何でもするっ」
「じゃあ死んで下さい」
「っひ――
頬に触れた手から、男の頭部が一瞬で凍結する。
氷室は表情一つ変えず男を倒し、凍った頭部を砕いた。
「氷室よぉ、お前の悪い癖だぞ、それ」
「銃で頭を撃ち抜かれるより、痛くないと思いますよ」
王山は溜息を吐き、パラパラと土埃を落とす天井を見上げる。
地下に潜っていた特殊部隊の面々は、先から徐々に強くなる地鳴りに警戒心を高めていた。
とその時、
「「「「――っ⁉︎」」」」「ッ⁉︎おいおいおい、……んだこの揺れはっ」
部屋全体が大きく揺れ、壁面に亀裂が走った。
同時に、本部から連絡が入る。
『ピー、ザザ、ピー、退、ザザ、ろ、撤、し、ザザ』
「――っ、お前ら、撤退や!」
五人は一斉に入口へ向かって走り出す。
「っ何が⁉︎」
「分からねぇが、地上で何かが起きてんのは確かや。俺の勘がさっきからヤバい警鐘を鳴らしとる。寒イボが収まらねぇ」
王山は冷や汗を垂らしながら、モンスターの残党を蹴散らし道を作る。
これ程の危機感を感じるのは初めてだ。
一体地上で何が起きているのか。彼は別部隊の安否を心配しながら、地上へと急ぐのだった。
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