第三巻 最終話

 


 ――大学から出て数日後、二人は高級ホテル内で、一通の電話と睨めっこしていた。


「我道総理、それで、要求というのは?」


 相手はなんと、この国のトップ。我道 英次郎その人である。


『ああ。これは国家機密なのだが、数日後、我が国で新しく編成した特殊部隊が、残った人達を助け出す為、特区に再突入する』


「国家機密を私達みたいなのに言っていいのですか?」


『無論だ。二人にもこの作戦に参加してほしいと思っている』


 東条とノエルの作り笑いが固まる。


『勿論ただでとは言わない。それに決めるのはまささんとノエルさんのお二人だ。無理強いはしない。

 ただ此方としては、受けてもらえると助かるのだが……』


 東条とノエルの額に、青筋が浮かぶ。


 画面の奥の、悪戯っぽい笑みを浮かべる初老のジジイをぶん殴ってやりたい。


 本来ならこんな面倒な仕事断るに決まっているのだがしかし、今回に限って、自分達には「はい喜んで」以外の選択肢が用意されていない。


 この件は『依頼』ではなく、『要求』だ。此方の自由意思が尊重される。

 そして自分達は、国に借りを作っている。目の前の爺さんは、それを分かった上で此方に頼んでいるのだ。


「……少し話し合ってもいいでしょうか?」


『勿論だ』


 ノエルがスマホをミュートにする。二人は一度画面から顔を外し、




「「――チィッッ‼‼」」




 全ての感情を舌打ちに変えて吐き出した。



「お待たせしました。喜んで受けさせてもらいます」


「ん」


『おおそうか!礼を言う!』


「いえいえ、人命救助の力になれるのなら本望です」


『宜しく頼むぞ。今回も、これからも、な』


「そうですね。これで対等です」


『何のことやら、ハハハハハ――』


「ハハハハハ――」


「ハハハハハ――」

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